病院とは異なる組織で看護・介護スタッフを管理する看護師長 井下早智代
介護老人保健施設「わたつみ苑」の看護・介護スタッフを管理する井下師長。病院とは異なる組織で、介護職と協働することへの考えなどを話し合いました。
井下師長さんの前向きさは素晴らしい
森安)井下師長さんにはわたつみ苑をお願いしていますが、配置を決めるにあたって慎重に考えています。病院ではない組織なので、誰がいいのかと考えましたが、井下師長さんなら出来ると確信して配置を決めました。人事異動の発表には注意を払って行っているつもりです。
井下)聞いた時は、そろそろ異動だろうと覚悟していた時期でした。急性期の病棟にいたので、急性期ではないところを経験したいと思っていたのですが、第一印象は「施設が来たか・・・」ということ(笑)。でも経験したことのない領域なので、興味芯々で「やってみようか」とすぐに思ったのを覚えています。
森安)「わからないから不安」という人が多い中「わからないからやってみたい」と思える前向きさは素晴らしいですね。行ってみてどうでしたか?
井下)わからないので「これをしたい」という目標はないまま始まりました。気づいたことは看護師は人数が少ないこともあり、責任感も強く、フィジカルアセスメント、リスクマネジメントなどを行っていました。それと介護職員のレベルの高さ。「介護職の人たちがこんなことまでできるなら、これだってやってみたらどうだろ?」と考え、どんどん介護職の業務の幅を増やしていこうと考えました。
介護職の主任をつくりたいと考えています
森安)師長さんの考えを伝えたときには、介護職の反応はどうでしたか?
井下)私の方針を伝えたときに、長年勤務しているスタッフの中に「もっと新しいことをしたい」という意欲を感じました。新たな挑戦には勉強も必要になりましたが、前向きに取り組んでくれて、介護のレベルが上がっていくのを実感しました。
森安)介護職員の力を認めるところから入っていったのが良かったのでしょうね。
異なる資格を持つスタッフを束ねていくのは大変だと思うのですが、相手を理解して尊重することで、うまく協働できる環境を整えていると感心します。今以上にチームが結束するために、これからしたいのはどんなことでしょう?
井下)今、主任は看護職しかいないのですが、介護職の主任をつくりたいと考えています。力を持っている介護職員がたくさんいるので、誰を推薦したらいいかと悩んでいるのですが・・・。これまでなかった役職なので役割モデルがおらず、慎重に選ぶことが必要だと考えています。
推薦する側が意志を固めることが大切
森安)業務ができる人が主任にふさわしいとは限らないので、管理のコンピテンシーに照らして人選することが必要ですね。私も、師長や主任、副主任に昇格してもらう時には「あなたなら出来ると信じている」という強い意志を伝えています。初めは戸惑いながらでも、そのうち変化がみられ頑張っている姿を見ると「あなたを選んで間違いなかった」と言葉で伝えるよう心がけています。
井下)組織の人間関係を保つように、選出方法をスタッフからの推薦なども含めて考えているのですが、最終的には推薦する側が意志を固め、それを揺るがせてはいけないということですね。看護職と介護職がお互いの専門性を発揮して、チームで看護・介護の質を高められるような組織づくりにむかって、リーダーの育成を強化していこうと思います。
森安)井下師長ならやってくれると信じています。期待していますよ!
わたつみ苑は、実際入ってみると現場には活気があり、入所者の生活機能の維持・向上を図るために多職種が協働していると実感しました。委員会でも問題解決の為の意見交換ができる場が多くあります。そんな中で、対等に介護職の役割モデルとして意見を言え、業務拡大やリーダーシップを発揮する意味でも、主任を作りたいという考えには共感します。
また、「看護職と介護職がお互いを認め合い、役割を担い、専門性を発揮して連携する」ことが看護・介護の質を高め、組織の質向上にも繋がると認識しました。
(主任看護師 河田詩子)