複数の看護単位をまとめる看護師長 池下愛子
複数の看護単位をまとめる池下看護師長。抱えるスタッフの人数も師長の中で最大ですが、そんな大きな組織をまとめる秘訣を話し合いました。
異動は大切だと実感しました
森安)スタッフの人数は、25人と11人。まとめて36人のスタッフをまとめていくという大変な役割をお願いしていますが、スタッフの状況はどのようなものでしょう?
池下)今の役割をいただいて3年目になりますが、初めの頃に比べて、ICU・CCUと地域救命救急センターの壁が低くなってきていると思います。ここに来たばかりの頃は、これら2つの部署について、距離は近いけれど大きな壁があって、ちょっとした相談ができないことで互いに不満を持っている状態でした。
森安)常に目に見えない壁があったと聴いていたので、互いに協働しなければいけない部署だけに、分離するのを避けるため、主任も1人体制にしました。また、意図的にICU・CCUと救命救急センターの人事異動を増やしました。デメリットもあったでしょうが、結果はどうだったでしょう?
池下)はじめは混乱もありましたが、主任が両者の気持ちが理解できそれが行動に表れるようになったのは、大きなメリットだと思います。相手の立場になって初めて気づくことも多いようで、互いに理解しあえるようになり、一体感もでてきました。
森安)そう感じるのはどんな時でしょう?
池下)以前は、互いに出来ていないことを指摘し合う風土でした。「ここはこうしておいてもらわないと困る」と思っていても相手には直接言えないようでした。でも今は、互いのできていない部分を当たり前のようにカバーし合うようになっています。やはり異動は大切ですね。
師長が抱えず、主任に委譲していくことが大切
森安)異動をマイナスに捉えるスタッフもいます。でも私のモットーは、この人ならできると信じて人を動かすことで、「あなたなら出来る」と背中を押すようにしています。また、異動したらこれまでの経験が活きて深まるし、違う興味も湧いてくるという自分の体験も伝えて納得してもらうのですが、はじめは不安でも、やればできるもので、みんな適応していきます。
池下)そうですね。出来ないと言っていても、行ったら出来るようになっているし、気がつかなかった面白さに気が付いたりしているようです。
森安)ところで、多くのスタッフがいる中での管理は大変だと思うのですが、何か工夫していることはありますか?
池下)人数が多いと面接が大変です。だから、気になるスタッフにはその時に声をかけるようにして、改まった面接は目標の確認をするだけに留めています。今回、よく似た目標の人を集団で面接してみたのですが、先輩が後輩にアドバイスをする場面もあり、これはいいと思いました。あと、出来ない部分は、出来るだけ主任に頼ろうと考えています。
森安)そうですね。師長がすべて抱えるのではなく、仕事を委譲していくことも大切ですね。主任に現場を任せていくことが主任を育てることになるのですから。
その他、師長さんとして、現場のスタッフに気を配っているのはどんなことでしょう?
深い意思決定の場面こそ「その人らしく」の意識が大切
池下)うちの部署では急性期の看護を担い、回復してきたら病棟に移動するので、患者さんから評価をいただく場面が少なく、やりがいを実感しにくい部署だと思います。だから、自分たちが関わった患者さんが良くなった姿をフィードバックできる機会をつくりたいと思っています。
先日、ICUを出た患者さんと再会した看護師が「ICUで呼吸器がついていたとき、頭元で看護師さんが頑張れと言ってくれた声をおぼろげに覚えてる」と聴いてきて、患者さんが回復した姿やその言葉に感銘を受けていました。それを見て、こんな機会を意図的につくるのも大切だと。
森安)ケアの評価を受けることは、質向上につながるし、モチベーションにもつながりますね。
池下)また、ICU・CCUと救命救急センターの看護師の一体感をもっと深めることも課題です。朝は一緒にカンファレンスをしていますが、同じ患者さんを引き継いで看護し、意識がない患者さんに対しても、この人にどうなってほしいかを確認し合える環境にしたいです。
森安)ともすれば生命を救うことだけを考えてしまいがちな部署ですが、生きるための深い意思決定に関わるだけに、看護師は「その人らしく」を意識することが求められると思います。みんなで意見を交換しながら、その人らしく生きられるように患者さんやご家族を支えてほしいです。
池下)若い看護師もしっかり自分の意見を述べられるよう配慮し、その人に合わせたケアをみんなで考えて提供しながら、チーム医療の中で自分たちの役割を発揮できるようにしたいと思います。
森安)池下師長ならできますよ。よろしくお願いします!