新人看護職員研修責任者(師長)

新人看護師の研修責任者を担う 看護師長 荻田多恵子

新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化になった2010年から専従で新人看護師の研修責任者を担う荻田師長と、これまでを振り返り、今後に思うことを話し合いました。

現場で使える知識や技術の習得を目指して

森安)荻田師長さんに新人看護師教育の専従をお願いしてから、う6年目になりますが、これまでを振り返って思うことはありますか?

荻田)はじめのうちは、原則的な知識や技術を養うように、集合研修を充実させることばかりを重視していました。しかし途中から、それではダメだと気がついたのです。集合研修で学んだ知識や技術を現場で使えるようにすることを重視しなければダメだと考えるようになりました。

森安)だから研修のやり方を変えたのですね。

荻田)そうです。集合研修は原理原則を押さえながらも、現場で使っているものを使ったり、現場に近い状況で行えるようにしました。また、集合教育とOJTを隔日で行い、研修した内容を現場に持ち帰って実践するなど臨床現場との連携を大切にしていくようにしました。

森安)そうして試行錯誤を繰り返した中から「マーガレットシステム」が出来上がったのですね。また、新人看護師たちとの関わり方も変わったように見えますが・・・

はじめは巻き込まれていたように思います

荻田)初年度は新人に近づきすぎて、新人と一緒に泣いたり笑ったりの日々でした(笑)。新人の成長を見るたびに嬉しくて目頭が熱くなるなど、巻き込まれていたように思います。でも経験を積むうちに俯瞰できるようになっていきました。

森安)はじめは私も荻田師長さんも新人も一体化していましたよね。私も途中から、荻田師長さんと私の役割を分けて考えなければいけないと気がつきました。そこで、荻田師長さんが担う役割を明確化するために、新人看護職員研修責任者の管理基準を考えてほしいと依頼したのです。

荻田)当時は、新人研修や新人のサポートなどについて、やらなければいけないことにばかり目を向けていて、自分の中で、担うべき役割がハッキリしていませんでした。管理基準を作成したことで果たすべき役割が明確になり、もっと広い視野で新人教育について考えることの必要性を実感しました。そして新人が成長するための環境や、サポート体制づくりなどにも目を向けたりできるようになった気がします。

森安)そうなのですね。その管理基準をいつも意識して、自分の立ち位置や役割を確認しながら仕事をしてほしいと思っています。

荻田)確かに、いつも意識していないと、目の前のことに振り回されてしまいますね。

経験学習を重視して実践力を高めたい

森安)ところで、今年の新人教育で力を入れているのはどんなことでしょう?

荻田)経験学習を重視しています。経験したことを振り返って知識に変えるためには、その経験から何が学べたかを自分で言葉にすることが必要だと考え、振り返りシートへの記載を促しています。最初は感想のような記載が多かったのですが、最近はそこから学んだ事を記載できるようになってきました。

森安)その場で振り返ることも大切ですね。

荻田)現場では先輩に、新人看護師自身が振り返れるような声かけをしてほしいと伝えています。「忙しくて振り返りの時間が取れない」というような意見も出るのですが、特別に時間を設定しなくても、歩きながらでもいいから、隙間に時間を使って振り返りをしてほしいとお願いしています。

森安)特別なことをしなければいけないと考えているのではないでしょうか。
看護師はよく「忙しくてなかなか患者さんとコミュニケーションがとれない」というようなことをいいますが、コミュニケーションはベッドサイドだけではなく、検査にお連れするときや、廊下ですれ違う時など、意識すれば少しの時間でもとれるものです。振り返りだって同じことで、ナースステーションに戻る途中でも、片づけながらでも出来るということを伝えていかなければいけないのでしょうね。

荻田)そうですね。またこれまで、先輩には新人をサポートしてほしいということばかり言ってきましたが、それだけではなく、新人にも主体的に先輩に働きかけるよう伝え続け、自ら発信する力を育てることも大切だと考えています。

森安)お互いが考えていることを声に出し合い、認め合いながら先輩が新人をサポートし、共に成長できるような環境を整えるのが荻田師長さんの役割ですね。これからもよろしくお願いします。

荻田)私自身も新人教育の経験を振り返りながら、当院の新人看護師教育「マーガレットシステム」の質の向上を目指して取り組んでいきたいと思います。