人と人とのつながりが深い病院

month-nurse54看護師 安倍宏美
「手に職をつけたい」という理由で看護師をめざし、資格取得後は大学病院で経験を積みました。結婚を機に転居したことから退職して専業主婦になったのですが、子どもが1歳を迎えるころには「仕事がしたい」と思うようになりました。
地元で再就職先を探して当院を知り、総合病院で多様な経験が積めそうだということ、そして子育て支援がしっかりしていると思ったことから当院への就職を決めました。
当院に来て一番に感じたことは「他職種や所属の異なる看護師とも交流が深い」ということでした。これまでの病院では、同じ職場以外の人とは関係性が薄かったのですが、ここは、すれ違う人たちも気軽に声をかけ合っており、職種が異なっても、とても親しいのです。そのため、困ったときには、別の部署にもすぐ相談ができるので、問題解決がスムーズだと思いました。
また、看護師の年齢層が幅広いことにも驚きました。当院はさまざまな経験を積んだ中堅以上の看護師の層が厚く、知識が豊富な看護師が多いと感じています。

言葉の裏にある気持ちを汲み取ることが大切

看護師になって間もないころのこと。精神疾患を持つ患者さまに対し、回復されてきたので退院に向けた支援をしようと考えました。カンファレンスで話し合い、ご本人の意思を確かめ試験外泊をしていただくことになったのですが、外泊中にその患者さまは海に身を投げたのです。幸い一命は取り留めましたが、その人にとって良かれと思って考えたことが患者さまには大きな負担だったことを知り、患者さまの想いと医療者側の想いには差があること、そして、その人の言葉をそのまま受け取らず「本当はどんな気持ちなんだろう?」と深く考える必要があることを学びました。その日からずっと、「言葉の裏にある本当の気持ちを汲み取ろう」と思いながら患者さまに関わるようにしています。
看護をしてきて思うのは、経験が活きるということでしょうか。以前の病院と今の病院では、専門領域は異なります。でも、どんな疾患であれ、患者さまの想いは変わらないため、これまで重ねた経験は決して無駄にはなっていません。また、自分が家庭を持ったこと、母親になったことでも看護に幅が出た気がします。人を相手にする看護では、どんな経験でも仕事に役立つと実感しています。

仕事があるから子どもにも優しくなれる

今は子育てと仕事の両立ですが、家族のサポートがあるおかげで楽しく毎日を過ごしています。義理の両親が子育てなどにも協力的で、無理なく仕事ができることには感謝するばかりです。専業主婦のときは息がつまりそうな毎日だったのですが、今は仕事をとおして自分の世界が広がったおかげで気持ちにも余裕ができ、子どもにも優しい眼差しを向けられるようになりました。
とはいえ、職場ではまだ余裕がないのが現実なんです。自分が新人の頃、プリセプターの先輩は、知識が豊富で的確に仕事をこなし、そのうえ穏やかな対応で、私たち新人のことを理解しようと努めてくださいました。「私もこんな看護師になりたいな」と思ってきたのですが、まだ足元にも及んでいません。
再就職をして以来、知らないことを吸収できるのは楽しいと感じているので、これから当院でいろんな部署を経験して知識を増やし、人間的にも成長し、私が憧れた先輩のような理想の看護師に近づきたいと思います。そして患者さまはもちろん職場の人たちを大切に想い、今度は私が若い人の理想の看護師になることが当面の目標です。

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安藤三智子
私は、安倍さんと同じチームということもあり、看護援助を一緒に行ったり、患者さんのことを相談する機会がよくあります。
安倍さんは、与薬に行った時やケアの時など、あらゆる場面で患者さんの情報をキャッチしてそれを個別的な援助につなげています。安静度の拡大やそれに応じたケア変更など、細かなことに気付きそれをスタッフに共有してくれます。
また終末期の患者さんから「今日は、安倍さん来ないの?」と聞かれたことがあります。終末期の患者さんにベッドサイドで寄り添う姿勢は、患者さんに安らぎを与えていました。忙しい中でも、その人にとって必要な看護が提供できる、そんな看護師に私もなりたいです。

鎌倉美也子
安倍さんの「言葉の裏にある気持ちを汲み取ることが大事」という部分に私も共感しました。安倍さんは「Aさんは~だから(Aさんの態度、表情、言動などから)たぶん、こうしたいんだと思います」と、よく話されています。その時は、何気なく聞き流していましたが、今考えると患者さんの一挙一動をよく観察し、その方が何を望んでいるのか、日々のかかわりから考えていたんだなと実感しました。
私はまだ新人で、毎日仕事でいっぱいいっぱいの日々です。でもこれからは、安倍さんのように、患者さんの思いを汲み取り、それをできるだけ実現できるようサポートするためにもっと患者さんと向き合わないといけないなと改めて考えさせられました。