今は外来化学療法室で勤務

month-nurse55看護師 竹本理恵
幼いころから認知症の祖母と一緒に暮らしていた私は、小学生のころには母と一緒に食事の介助などをしていました。そんなある日、看護師をしている母方の叔母が、「看護師は人の役に立てるいい仕事よ」というひとことに心が動き「よし!看護師になろう」と思い、それから気持ちが変わることがなく看護師に。そして当院に就職しました。
新人の頃は外科病棟で勤務し、その後は消化器内科の病棟や血液内科の病棟を経験して、今は外来化学療法室で勤務しています。その間に3人の子どもを出産し、今の職場に来たのは3人目の子どもの育児休暇を終えてから。3人目の子どもが1歳になって職場に復帰してからは、当院の保育所に子どもを預けて勤務をしています。

その人が求める援助に時間を使うことが大切

看護師になって忘れられないのは、交通事故で運ばれた20代の女性患者さんのこと。肝臓損傷で安静が必要だったその人は入浴することができません。自分と同年代の女性であり、毎日お風呂に入りたいに決まっています。そんな気持ちを察して洗髪を計画に入れていたのですが、日勤が終わっても洗髪にまで手が回っていない私でした。何せ外科病棟は、手術前の処置や術後の経過観察、医療的なケアに追われて日常生活の援助は後回しになりがちです。私も医療処置に追われて一日の勤務時間が終わってしまい、夜勤帯になってから彼女の洗髪をすることになりました。そして援助を終えたときの患者さんの嬉しそうな笑顔・・・。その心地よさそうな表情は今も私の胸に焼き付いています。日勤帯の間、ずっと不快な気持ちを我慢して、待っていてくれたんだと思うと申し訳なく、そして清潔ケアを通して心を安らげることが回復力につながる重要な援助だということを意識しなければいけないと痛感しました。
どうしても私たちは医療処置がたくさんある患者さんを優先してしまいがちですが、全ての患者さんを平等に、その人が求めている援助に時間を使うことの大切さを教えてもらった出来事でした。

安心感が与えられる看護師になりたい

今、私が勤務している外来は、患者さんと接する時間が短いので短時間に信頼関係を築いて安心感を提供しなければなりません。患者さんに対しては第一印象を大切にして、できるだけ会話を広げようと努力の日々ですが、その切迫感が外来の面白さのように思います。
化学療法室では看護師は薬剤から身を守るためにマスクをつけることが義務付けられているのですが、目しか見えなくても表情が伝わるように目は笑っているように、そして時にはまじめな眼差しで対応するように心がけています。
また会話を続かせるためには、患者さんの不健康な部分に着目せず、健康な部分の話をすることを心がけています。すると気持ちが前向きになっていき、会話が弾み自然に疾患や治療への不安なども話してくださるように思います。
不安を抱える患者さんの多くは、信頼できる看護師に「大丈夫!」と背中を押してほしいのだと思うんです。だから短期間で心を通わせて不安を受け止め「大丈夫!」と安心感を与えて背中が押せる看護師になるのが今の私の目標です。

1年間で出来上がった宝物

staff_201310-2[1]今月のナース 今の職場に来て1年ですが、やっといろんなことが見えてきました。初めはわからないことばかりで戸惑いの連続でしたが、わからないことを調べたり、新しいことを知ったらメモをしてきました。そして気がつけば分厚いメモ帳ができたんです。はじめは胸のポケットに入れていたのですが、今はもうポケットに入らなくなっています(笑)。このメモ帳は肌身離せないお守りのような存在。「これだけ頑張れたんだからこれからも頑張れる」という心の支えや「これだけ頑張ったからもっとここで頑張りたい」と思うモチベーションの源泉になる宝物になっています。また、もうひとつの宝物は、私に会いに来てくれる患者さんたち。治療日以外に会いに来てくださる患者さんもおられますが、他愛ない話をする中で不安をかかえる患者さんに安心感が与えられたなら、看護師としてこれほど幸せなことはありません。
そんな風に、看護にやりがいを感じてはいるのですが、本音は仕事と子育ての両立で精いっぱい(笑)。けれども子どもの成長とともに自分も成長できるようにと心がけ、子どもの自立に応じて私もキャリアアップが図れるように考えていきたいと思っています。

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外来化学療法室 伊加由美

アデランスのメモ帳!分厚くなりましたね~(笑)
最初に「何かメモするものありますか?」と聞かれ、渡したメモ帳。二冊目突入かと思えば、「付け足します」とテープではり続け、今では竹本さんの約2年間の集大成。いろんなことを常にメモし、私たちが度忘れした情報も「竹本さん、どうだったかなあ?」と尋ねると、パラパラとめくり即答。こんなに分厚くてもどこに何が書いているか分かっているのもすごい。「インタビューの時に営業向きですねと言われました」と言っていましたが、同感です。
今の自分を育ててくれた上司、同僚、そして患者様
私も、がん化学療法看護認定看護師を目指すきっかけになったエピソードや気持ちの変化など竹本さんに話し、竹本さんからも「勤務時間外になってしまった患者様の洗髪のこと」を含め、幅広い話を聞いたり話したりしていますが、化学療法室メンバー3人の会話は、たわいない雑談も含め、とても大切な瞬間。他人に話すことで、自分自身の思いが整理できたりいつの間にか同僚に影響を与えていたり、私も上司や先輩の心に残っている言葉があります。また、様々な患者様との出会いも自分自身の人生勉強になっていると思います。毎日記入しているカンファレンスノートも、投与に関することだけでなく患者様の言動や背景、意思など細かい内容も残していくことで、3人が情報共有できるツールとして継続していこうと思っているので、協力お願いします。
家族の協力なしでは続けられない仕事だと日々痛感
いつも明るく、笑顔で元気な竹本さん!その根源は、3人の子供たちと御主人さん、そして協力してくれる御両親とおばあちゃん、おじいちゃん。私も、家族には本当に感謝!感謝です。高齢化社会のいま、治す医療から支える医療へと変化しています。治療への期待と強い意志を持ってがん治療に望んでいる患者様や御家族の支えになれるよう、これからも一緒に頑張っていきましょう。