看護師 山野上友美
小学生の頃、祖母の入院がきっかけで看護師の仕事に触れ、その優しい笑顔に癒されて「私もこんな風に人の役に立てる仕事がしたい」と思うようになりました。中学・高校と進んでも看護師への興味は薄れることなく、進路を決める際に看護師になることを決意しました。
看護学生時代を振り返ると「実習が大変だった」という一言に尽きるのですが、実習では机上の学習だけでは看護ができないことを痛感し、患者さまを通して深く看護が学べたように思います。
私の姉も看護師で、私より先に当院に勤めていました。そんな姉から「うちの病院、いい病院だからおいでよ」と誘われるまま卒後は当院に就職。高知県出身の私は、慣れない土地に移り住み、不安いっぱいで就職したことを今も覚えています。
当院に就職した第一印象は「優しい看護師さんが多いなぁ」というものでした。患者さまに優しいのはもちろん、私たち新人にも優しく声をかけてくださり、不安はすぐに消えていきました。
ベッドサイドを大切に
看護師になって3年目になりますが、同じ病棟で3年を過ごし、今はプリセプターをしています。1年目の看護師を見ると「私もこんなだった・・・」と懐かしく、とはいえ自分もわからないことばかりで先輩に頼りながらプリセプターをしている状態。とにかく新人看護師と話しやすい関係だけは維持しようと心がけています。
私が新人の頃、先輩に言われたのは「ベッドサイドから看護は始まる」という言葉。学生時代は、患者さまの情報を持たずにベッドサイドに行っても何もできないと教えられました。そのため新人の頃の私はデータからの情報ばかり集めていると「パソコンばかり見てても情報はとれん」と先輩からひとこと。「まずは患者さまの顔を見てごらん、ベッドサイドで五感を使って情報をとっといで。そしたら必要な看護が見えるけん」と。その言葉は衝撃的で、そのとき「情報を肌で感じ取る術を身につけよう」と思いました。
初めて受け持ちをさせていただいた患者さまは今も忘れることができません。受け持ちをするまでは、業務をこなすことで精いっぱいだったのですが、1年目の夏に初めて患者さまを受け持ったとき、先輩から「この人は退院後の生活をどうしたいと思っておられるの？」とか「ご家族の希望は聞いた？」と問われ、社会面に目を向けなけれればいけないと実感。そうしていると痛みについての問題が浮上し、ペインコントロールについて医師と相談・・・。「私、看護師になったんだ！」と受け持ちを持って初めて実感しました（笑）。患者さまをひとりの人として、さまざまな角度から考え、援助することの必要性を学び、患者さまへの責任もその時芽生えたように振り返ります 。
相手の想いに耳を傾けられる看護師でいたい
その後出会った患者さまのこと。精査目的で入院後、進行性のがんが見つかりそのまま2か月後に亡くなられた方がいました。
ご本人は遠慮がちで、奥さまが付き添って献身的に看病されていました。刻一刻と病状が悪くなる患者さまの看病に、奥さまの不安も増大して表情が暗くなっていくのを感じた私たちは、奥さまと一緒にケアをしようと計画したのです。
日ごとに状態が悪くなり、少しの体動でもバイタルが変化して体動制限も必要に・・・。しかし、患者さまにとっては体動を制限することもまた苦痛であり、それを見ている奥さまも辛そうです。そんなとき「患者さまにとって何が一番大切なんだろう？」と考えるようになりました。医療者が求めることと患者さまが求めることの差異をどうしたらいいのか。答えは出ない疑問を抱えながら奥さまが患者さまに関われる機会をつくってケアを続けました。そして患者さまは帰らぬ人に。発見から数か月で亡くなってしまったけれど奥さまはその死を受け入れ、ご自宅に戻られました。
実際、奥さまの感情を表出できるよう関われていたのかはわかりませんが、この患者さまを通して、たとえ自立されている患者さまでも心の中には不安がいっぱいだろうし、明るく振る舞うご家族でも言いたいことがあるに違いない。どんな人でも積極的に話を聴く姿勢で関わろうと思うようになりました。
忙しい毎日の中で時間をつくるのは大変ですが、出来るだけベッドサイドに足を運び、相手の想いに耳を傾けられる看護師でありたいと思います。
南4病棟スタッフより
「ナースのストーリー」病棟スタッフみんなで読ませていただきました。山野上さんが大切にしている”看護”がよくわかりました。明るく、優しく患者さんに関わっている姿を見て、見習いたいと思うし癒されている患者さんは多いと思います。
急性期、ターミナル期のそれぞれの立場の患者さん･家族に対して視点を向け、必要なことや求められている事は何だろうかと考える看護をしていると思います。そんな思いがあるからこそ、日々患者さんと接する山野上さんの顔は、イキイキとしていて輝いていますよ！！
