混合病棟で目指す看護~あなたが大切にしていること~

南2病棟

業務は多忙を極めるが、スタッフは「専門性を発揮できる看護がしたい」

南2病棟は泌尿器科、皮膚科、形成外科、耳鼻科、眼科、歯科、他内科の受け入れなど多種多様な患者層からなる混合病棟として稼働しています。領域は急性期から周手術期、慢性期、回復期、終末期にわたり、1か月で約110人の患者が入院・退院します。補助業務としては内科的治療や外科的治療、手術やがん化学療法があり、多忙を極めます。2023年度病棟のチーム活動でスタッフに行ったアンケートで「達成感がない」といった意見が複数みられました。
先行研究では、「混合病棟は多種多様な患者を担当することで、業務が煩雑になり、業務量が増える可能性がある」また「多様な業務を担当するため、スタッフが自らの役割を十分に把握していない、責任感が薄い」とあり混合病棟での看護の難しさが述べられています。
しかし、アンケートには「普段は業務が優先だけど、患者に寄り添った看護がしたい」「専門性を追求した看護がしたい」といった高い目標意識の意見もみられました。
そこで、当病棟でも看護部のクレドをもとに「その日の患者の看護を理解し、専門性を発揮できる看護」を意識して取り組んできました。大切にしてきたのは、「患者さんや家族の意思決定支援」です。患者さんや家族の意思決定に耳を傾け、思いを形にすることをしてきました。

「家に帰りたい」患者と「自宅退院は不安」な家族が相互理解できた事例

Aさん85歳女性。左腎盂腎がん。がん化学療法後維持療法として免疫チェックポイント阻害薬を使用していた患者です。免疫関連有害症状として心不全を併発し入院となりました。
加療により状態は改善され退院調整となりましたが、退院には9つの問題点が上がりました。上がった問題は医師、薬剤師、リハビリ、栄養科、MSWと相談し連携しがら対策を行いました。
とくに問題になったのが本人と家族の意思に齟齬が生じたことです。本人は早く自宅に退院したいが、家族は転院をはさんで自宅退院を希望されました。そこで本人の自宅退院への思いの聞き取りを行うと、「愛犬に会いたい。旦那と愛犬とまた生活したいです」と愛犬に会いたい気持ちとご主人との生活が早期退院の希望に繋がっていることがわかりました。家族からは「二人暮らしの父は家に帰ってきてほしいと言っているが、今の状態で家に帰って本当に大丈夫か。どれだけの介護が必要かわからないし父は介護には協力的じゃない。自分は近くにはいるが仕事もしているし別居だから何かあったときすぐにはかけつけられない。転院をはさんで自宅退院してほしい。本人は自宅に帰りたいと思っているから納得するまでは転院については話さないでほしい」と自宅退院されることについて不安をもっていることがわかりました。
私たちは本人の家に帰りたいという思いをかなえたい気持ちと家族に現状を知ってもらう機会として試験外泊をすすめました。そして、主治医の許可を得て一泊の外泊を実施しました。
外泊後に双方から聞き取りすると、本人からは「愛犬にもあえて何よりも嬉しかったです。家族とも一緒に過ごせてよかった。動いたらやっぱり息切れはありました。先生と家族が転院でいいなら転院で大丈夫です」、家族からは「車の移乗に、段差が高く困難だった」「移乗を繰り返すと息切れがみられた」「更衣・排泄のケアが難しかった」「管の管理が不安。前にも先生に言ったが転院をはさんで自宅退院したい」「一度自宅に帰ったことで父も転院に理解を示してくれています」といった声が聞かれました。
この一泊の外泊により、本人は気分転換ができたと同時に、自宅での生活の困難さを実感し転院をはさんだ自宅退院を考えるようになりました。家族は自宅へ退院する為のあらたな問題点を明らかにすることができました。

患者と家族が納得できる退院支援を

はじめは本人の意思を第一に考え、自宅退院に向けて準備を行っていました。しかし、患者と家族が本当に安心して生活するためには、病状が安定していることや家族の介護力があることが前提であり、それがない場合は転院になってしまうこともあります。今回は外泊によって本人と家族が納得できる退院支援へとつなげることができました。外泊から帰ってきた際、嬉しそうに話される姿はこちらも嬉しく思いましたし、看護のやりがいを感じました。
この事例を通して、患者や家族が納得できる意思決定に耳を傾け、目標達成までの過程をともに考えながら支援することが大切だと再認識できました。患者さんとのかかわりのなかで看護師自身が「どう感じて・どう考えたか」を大切にし、患者さんが満足できるケア、看護師が納得できるケアを大切にできる病棟を今度も目指していきたいと思います。