身体損傷リスク状態と手術が迫ることによる緊張感や不安に対応する看護実践

中央手術室

2020度より新しい整形外科の医師が赴任し、脊椎の手術を再開することになりました。脊椎の手術では、O-アームというものを使用します。O-アームとは、レントゲンやCT撮影機能を備えた器械です。O型のアーム内360°方向からCTスキャンを行いナビゲーションシステムへ転送し、3D画像で確認しながら正確にスクリュー挿入を行うことができる為、精度の高い手術を行うことができます。さて、今回は、身体損傷リスク状態と不安についての看護実践を紹介します。


左側臥位で身体損傷リスクのある手術や痛みに対する不安を感じているAさん

Aさんは、60代女性で変形性側弯症により2期的に手術を行うこととなりました。既往にうつ病で入院歴がありますが、抗うつ剤を内服し現在症状は安定しています。術前に訪問を行い、手術や麻酔についての理解度の確認や手術当日の流れについてパンフレットを使用し説明しました。Aさんは、手術後の疼痛について気になっている様子があり、疼痛時は我慢しないで鎮痛剤の使用ができることを説明しました。術前情報から
⑴BMI25.8であり、側弯症により腹部が左側へ突出していること
⑵左側臥位で4時間予定の手術であることから、周手術期体位性身体損傷リスク状態があること
⑶痛みについて心配していること、うつ病の既往があること、手術が迫ることによる緊張感からの不安があること
以上の看護問題が挙がりました(資料1)。


術前訪問時と明らかに違うAさんへの声掛けと付き添いによる不安緩和と体位固定時の看護

手術当日の朝、術前カンファレンスを行い、看護問題に対しての看護計画の情報共有を行いました。Aさんは術前訪問時、不安はないと言われていましたが、入室時、その時の様子とは明らかに違いました。緊張している様子が伺えたので声をかけ、麻酔導入までAさんのそばで付き添い、肩に手を添え、手を握るなど、一緒に頑張るものがそばにいることを感じてもらうような接し方をしました。またBGMの活用や不快を感じさせないように室温調整を行い不安や不快の緩和に努めました。      
続いて、体位固定時の看護です。脊椎手術の際は、ストレッチャーで挿管や必要なルート確保後に、手術ベッドに移乗し側臥位を取ります。術前訪問時や麻酔導入後、皮膚状態の観察を行い、側臥位を取りました。脇下にゼリー枕を挿入し、静脈叢や腕神経叢圧迫によるうっ血や神経損傷の予防を行います。上側の上肢は手台に乗せ、肩よりも挙上しないように調整し、上腕神経・尺骨神経・橈骨神経の保護を行います。また、手台の支柱と下側の上肢が接触しないようにソフトナースを挿入します。下肢の間には枕を挿入し、下側の下肢の腓骨小頭を浮かせるためにソフトナースを挿入します。ベッドから下肢が落ちないように抑制帯で固定します。体幹はニチバンテープでベッドと固定し、動かないようにします。体位固定後に、枕やソフトナースを入れた部位がきちんと除圧できているか、手を入れて確認します。体位の固定は術後の患者さんの回復にも影響を与えるため慎重に行う必要があり、看護の力が発揮される場面でもあります。(資料2)


次の手術担当者、病棟看護師との連携によりつながった二度目の手術への不安軽減

手術後、対極板やテープなどを愛護的に剥がし、皮膚トラブルが発生ないか確認しました。術後4日目の訪問時、創部の状態や皮膚トラブル、神経損傷などがないことを確認しました。Aさんは、痛みより吐き気が辛かったとのことでした。1週間後に2回目の手術を控え、嘔気を心配されていたため、「吐き気は我慢しなくてもよい」ことを伝え、次の手術の担当者へ伝えました。また、病棟看護師への情報提供により病棟看護師からもAさんを気遣い、声をかけてくれたことは、2回目の手術を受ける上の不安軽減につながったのではないかと考えます。患者さんは、私たち看護師に対して、忙しくしている姿を見て遠慮することもあり、痛みや吐き気を我慢してしまうケースもあります。患者さんが訴えやすい環境づくりを常に意識して、同じ部署の看護師、病棟看護師との連携を意識するようにしています(資料3)。それに加えて、手術室では、常に医師・看護師・技師の連携が必要であり、他職種との協働のもと手術が成り立っています。お互いの職種が担う役割をそれぞれが理解し合うことが基本ですが、それぞれが考えていることが伝わっているとは限りません。患者さんにとって安心・安楽につながる医療を提供するために手術室・病棟と看護を分けるのではなく、暗黙の了解に頼ることなく、合っているかどうか確かめ合うこと、それを声に出して伝え合うこと、継続し連携を図ることを大切にしています。(資料4)