腎センター
透析は、1日4時間・週3回行う治療です。短時間で体の中から不要な水分や毒素を除去するため、血圧低下や不快な症状を起こすことがあります。透析が始まっても、食事や水分制限、内服治療の継続が必要です。一生を透析と付き合うことになります。透析患者様も高齢化が進み、日常生活(ADL)、認知機能、視力などが低下してきており、指示通り内服ができていない患者様の事が問題となることがあります。しかし、問題解決に向けてアプローチが十分ではありませんでした。そこで、腎センターでは平成30年度より看護目標を「患者・家族・多職種で情報共有し、透析環境を整える。」とし、情報の共有を具体化することで、継続看護ができるように取り組みを行っています。
「気になるカンファ」を行い、継続的な評価を行い経過を見る。評価を記録に残し多職種と情報共有する。
【身体(からだ・こころ)の状態を看る力】
◆患者理解とニーズの把握
問題点の情報共有を進めていくために「気になるカンファ」というカンファレンスを実施しています。これは、患者様の問題点(あれ、何か気になる)について話し合い、具体策を考え、評価を行い、継続的に介入し解決していくことが目的です。例えば、残薬(残っている薬)の多い患者様については、食事や内服状況の確認、残薬を持参してもらい、数のチェックを行いました。そして、患者様、医師とも相談し、食事回数の少ない患者様に対しては、毎食後の処方を朝夕食後に変更する。食事ごとに内服する食後毎の薬を一袋にまとめる、処方日数を4週間より2週間に変更するなど、管理をしやすくする工夫をし、確実に内服ができるように変更を行いました。実は、これは昨年度も実施していたことですが、評価日に確実に評価ができないことが、昨年度の「気になるカンファ」の課題として残りました。そこで、今年度は途切れることなく継続できるようにするために、以下のことを実施しました。
a.患者様の問題点について一覧表にすること
b.評価、修正日を決定すること
c.それを一覧表に記入すること
基本的にはその日の担当者が問題点について患者様からヒアリングし、勤務している看護師が時間を調整して「気になるカンファ」を行い、内容を記録に残しました。a~cを実施することで、継続的に経過を見て評価し、問題解決にアプローチをすることができるようになりました。
◆診療の補助と療養上の世話
透析患者様は動脈硬化などが進み、血管の障害を持っていることが多いです。その為、小さな傷などでも治癒するのに時間がかかったり、悪化することもあります。特に足にこのようなことがあると、日常生活にも支障が生じてくるようになります。腎センターでは、足の異常を早期に発見するために、毎月足の観察(下肢評価)を行い、年1回足の循環状態を観察するために血圧脈波(ABI)を定期的に実施しています。
視力が低下し自分で爪を切りにくいという方がいます。そういう方には、透析時または毎月の下肢評価の時に爪切りを行っています。ABIで測定時に異常がある方については、追加検査を行い、循環器内科や血管外科に繋ぎます。また、傷や巻き爪などがある、あるいは足背動脈の触知が弱いなどの異常がある患者様については、皮膚科医師、形成外科医師、腎臓内科医師、皮膚・排泄ケア認定看護師を交えて月に1回下肢ラウンドを行いフォローし、早期に下肢の異常を発見し、下肢切断を回避できるように取り組んでいます。
外来維持透析患者の入院前情報を入力する取り組みを開始
平成29年度は外来維持透析患者様の約半数が入院を経験しています。腎センターではこれまでも、自宅での状況確認や緊急時にご家族との連絡を取るために、毎年患者情報を確認していました。この情報を病棟に繋げるために、予定入院の患者様だけでなく緊急入院時にも、入院前情報として入院時確認事項を使用し入力する取り組みを始めました。例えば、ADLが低下し褥瘡のある患者様の自宅での生活状況を聞き、それらを入院前情報として病棟に提供し繋げた結果、継続した看護を行う事ができ、褥瘡が悪化することなく完治したという事例も生まれました。当院では送迎のサービスを行っておらず患者様自身で通院するか家族の援助をうけながら通院しなければならない為、必要に応じて家族にも聞き取りを行い、援助や指導をし、自宅で安心して生活が出来、できるだけ長く通院できるようにサポートしていくことを目指しています。
情報を共有する中で看る力が向上し、他部門・多職種との連携意識が強くなった
さて、これらの活動を通じて私たちにも変化が生まれました。「気になるカンファ」が定着してきたことで看護師同士が患者様の変化について話し合う習慣ができ、情報を共有する風土になってきました。日々の担当者が中心になりカンファレンスを行い、記録を残すことにより、以前の状況を誰もがわかるようになりました。また、評価日を一覧にして見やすくすることで、受け持ち患者様について処置や関わりが適切になってきました。また、他職種との連携において、特に臨床工学技士と患者様の問題共有ができ、職種を超えて患者様に対してお互いがフォローし合うようになってきました。そして、連携という点では、入院前情報を病棟に提供することにより、次に繋ぐまでが私たちの役割という意識が当たり前になってきました。これからも、多職種、他部門との情報共有をはかり、患者様により良い看護が提供できるように援助を行っていきます。