社会人を経て看護師に

mitoyo-1510-story01石川里佳
以前は、東京で食品関係の会社で仕事をしていたのですが、私の地元であるこの地に戻ることになり、母から「女性が生涯、安定して働くために看護師資格をとったらどう?」と勧められ、初めて「看護師になろうか?」と考えるようになりました。実家で暮らしていたころは、寝たきりの祖父を家族で介護していたこともあり、この仕事に興味がないわけではなかった私は、母の勧めに応じて勇気を出して看護学校を受験することにしました。不安を持って入学した看護学校でしたが、クラスには社会人入学をした学生もたくさんおり、楽しく学生生活を送ることができました。
ここ三豊総合病院は、私が産まれた病院です。また、家族も何かあればお世話になる病院であり、看護師を目指した時から、卒後は当院で働きたいと思っていました。そんなこともあり、学生時代は低学年のころから、当院の“看護のひよこクラブ”に参加しました。ひよこクラブでは、実際の看護師さんと話せることが新鮮で、ひよこクラブのセミナーに参加するごとに、卒後の不安が和らぎ、看護師になりたい気持ちが向上したのを覚えています。

先入観を持たずに接することを心がけたい

入学時から考えていた通り、卒後は当院に就職したのですが、新人時代は思った以上に責任ある仕事だというプレッシャーが大きく、時にはそのプレッシャーに押しつぶされそうになることもありました。しかし、先輩に支えられながら1日1日をクリアしていくことで、徐々に仕事にも慣れて、心に余裕が出来たのは、2年目の半ばごろのように振り返ります。
これまでの看護で忘れられない出来事は、新人の頃に受け持たせていただいた、こだわりの強い患者さんのことです。その方は、腹水が溜まり、発熱を繰り返して倦怠感が強い状態でした。新人だった私は、辛そうなその方に、どう援助したらいいのかわからず、頻繁に訪室して言葉をかけたり氷枕を代えたりすることしか出来ませんでした。しかしその方が回復されたとき「石川さん、あの時はありがとう」と、何度も何度もお礼を言ってくださったのです。名前を憶えてくれていたことに感激するとともに、少しでも力になれたのだと思うと嬉しい気持ちでいっぱいになりました。この話を先輩に伝えると「先入観を持たず、その人をありのまま受け止め、力になりたいと考えた石川さんの姿勢が伝わったのでは?」と言ってくださいました。だから患者さんに対しては先入観を持たず、出来るだけベッドサイドに足を運んで、力になれることは何か?を考えようと思っています。

看護師になってよかったと思う気持ちを伝えていきたい

看護をしていると、辛いことや苦しい時もありますが、患者さんからいただく一言が力になり、頑張ろうという気持ちに変わります。そんな経験を重ねると、「遠回りをしたけれど、この仕事に就いてよかった」と思うばかりです。
今は、当院の“看護を伝える会”のメンバーとして、高校生や看護学生に、当院の看護を伝える活動をしています。私が学生時代に当院の看護師さんから「看護師になりたい」という気持ちを高めていただいたように、今度は私が学生さんに看護の魅力を伝え、やる気を引き出す番です。私は、人に何かを伝えるのは苦手なのですが、私が「看護師になってよかった」と思う気持ちを持って学生さんに接することで、看護の魅力が自然に伝わればうれしいと思っています。