看護の感動を伝えたい

西3病棟 助産師 池崎加奈子

池崎実習は、看護学生にとってとても大切なものです。学内で学んだ理論を実践の場で統合する術を学ぶ大切な機会です。患者様に寄り添い、一緒に考え、悩み、喜びや悲しみそして看護の感動を味わうことができます。
ある学生の話です。学生は、産褥期に一過性に抑うつ傾向になった患者様を、分娩から産褥期までを受け持っていました。とても落ち込んでいた患者様に、産褥期の計画ができない焦った気持ちを持ちながらも、それでもそっと寄り添い続けました。そして、悩みながらですが、その人が安心するその方にあった退院後のパンフレットを作り、お渡ししました。患者様が元気になり赤ちゃんと一緒に退院されるときに、学生のパンフレットを持ちながら「これをみると、この子が生まれてきてくれた喜びも思い出して、いまもうれしくて涙がでます。このパンフレットは、私のことをこんなにも考えて作ってくれたんです。どれほど勇気付けられたか。この子の成長とともに一生の宝物です」と涙を流しながらおっしゃいました。学生はそれまで、計画通りにすすまないことで、自分がうまくできていないのではないかと悩んでいました。しかし、患者さんのそのことばで、自分がやってきたことが無ではなかったと、患者さんを支えていたんだと、初めて感じ、感激と安堵で涙がとまらなくなっていました。まさに、看護はライブの瞬間でした。
その方のそばに寄り添い、一人の患者様にじっくり向き合えるのは学生のときだけ。この経験は今後の宝物になっていくでしょう。学生の産婦人科病棟の実習経験は、卵から雛がかえるように、胎児が、陣痛・分娩を経過し、新生児として元気で光り輝く未来をもって生まれるのと同じような経験ではないでしょうか。 。