いつのまにかしんどい思い、悔しい思いをやりがいが上回っていた

石川治奈
私が看護師なった動機は、子どもの頃から「看護師になれたらいいな」という気持ちはありましたが、実際に職業を選択する際に他に就きたい職業が浮かばなかったというのが正直なところです。でも、看護師になってみてこの仕事ができる喜びを実感し続けているので、本当に良い選択をしたと思っています。今は、そう思えていますが、新人の頃は、本音を言えばしんどかったです。覚えることも多い、要領もつかめない、知識は足りない、教えてもらってもできない・・・入職3か月くらいまでは、何も知らなくて当然という職場の雰囲気を感じ、私もわからなかったら聞けばいいという感じで過ごしていましたが、さすがに秋頃になると、同じことを聞いても良いものか、そろそろ自分でできるようにならなければならないじゃないか、周りの私を見る目も変化してきたではないかといった思いを抱き、プレッシャーによる余裕がない自分とできない悔しさに苛まれる自分にしんどい思いをしていました。しかし、後にわかるのですが、それは私の思い過ごしで、先輩たちは秋になっても私に対して変化なく、一生懸命育てようと接してくれていました。そんな中で、看護師の仕事に前向きな気持ちを持てるようになっていました。患者さんとの関わりが好きな自分を発見し、乏しい知識に対しては学べばいい、足りない技術は教えてもらいながら習得すればいいと思うようになりました。できるようになれば、先輩もほめて下さるし、一緒に喜んで下さるので、いつしかやりがいがしんどさを上回るようになっていました。

反応がない患者さんの小さな変化の積み重ね、その回復過程に関われる大きな喜び

私は脳神経外科の病棟で勤務していますが、手術をした患者さんが回復される過程に関わることができるのは大きなやりがいになっています。意識のレベルが低い患者さんの、私が手を触れるとその手がかすかに動く、そして、動きが増える、握るといった変化。話すことができなかった患者さんの、声が出る、言葉を発しようとする、少し話せるようになる、話せるようになるといった変化。私の方を向けなかった患者さんの、私の方に向いてくれるだけでなく表情が加わる変化。そして、こういった変化をお伝えしたときのご家族の喜びはとても大きなやりがいを感じます。私が心掛けているのは、意識がある人と同じように接すること、ご家族にも協力してもらうことです。反応がなくても、一生懸命声掛けをし、触れたりしながら刺激を与えていきます。ご家族の声は聴きなれているものですし、手は家族ならではのぬくもりを感じさせるものですから協力してもらうようにしています。何度やっても反応がないからとあきらめることは絶対にありません。よくなってほしい、まずは反応があるまでに回復してほしいという想いのみです。実際に、これまで3年間の看護師生活で、反応がなかったのにかすかにうなづく、表情が変わる、握り返してくるといった小さな成功体験を日々積み重ねています。脳神経外科看護は、ケアも多くて、体力的にもしんどいとよく言われますが、しんどさを上回るやりがいを十二分に感じて日々の看護を楽しんでいます。

新人や実習生に私の失敗・成功経験も含めて、知識や技術をわかりやすく指導していきたい

私の職場は、スタッフがとても仲が良くて、新人や実習生にも気軽に声掛けをする先輩が多く、若いスタッフにとってとても話しやすい職場です。私も、そうしていきたいというのがこれからの抱負です。新人や実習生に知識や技術について根拠を持って教えてあげる存在になりたいと思います。やり方を教えても、根拠や意味を教えないと教えられた方もなかなか習得できないと思います。だから、わかりやすく、伝わりやすくすることに工夫を加え、根拠や意味をしっかり伝えていきたいと思います。また、教えてばかりだと受け身な看護師になってしまうので、自分から根拠や意味を知ろうとする姿勢が大切であることも伝えていきたいと思います。実は、人に話をするのが苦手なんですが、「看護を伝える会」のメンバーとして高校訪問に行き、当院が実施している高校生に看護師の仕事を学んでもらう「ひよこクラブ」の案内をする経験をしました。苦手と逃げてばかりはいられませんので、先方に対してわかりやすく、伝わりやすくコミュニケーションをするためにどうしたらいいかを考えました。自分の看護に対する想い、ひよこクラブで高校生が何を学んで帰るのかなど先方の興味関心を想定して話の内容を考えました。こういう経験も前向きに捉え、新人や実習生にも知識・技術以外にも私の経験してきた失敗も成功も含めてそのプロセスについても役立てることができるように接していきたいと思います。