患者さんのために-コスモス研修で出てきたストーリー①

コスモス研修とは、40歳以上のベテラン看護師を対象にした研修会です。このコスモス研修で、これまでの看護体験を振り返る研修を行いました。

今まで看護を続けて来られた理由や、忘れられない患者さんについて語り合い、これからも大切にしたい看護についてまとめました。そこには、多くの感動やベテラン看護師ならではの暗黙知がたくさん詰まっていました。今回は、その一部を紹介したいと思います。

①高次脳機能障害の患者さんを初めて見たとき、はじめて徘徊する姿や言葉を聞いて驚いた。それが、とても興味深く勉強した記憶がある。その時、家族のことについても考え、病気ではないため最初は理解に苦しむだろうし、理解できたとしてもその行動(徘徊)に危険が伴ったりしてお世話をするのは大変だろうと思った。
②冷房のきいたOP室に入室した患者さんが、ベッドに敷いてある電気毛布が「暖かいなあ」と言ってくれた。OP室でできる看護ってどういうものだろうと考えたとき、意識のあるわずかな時間にも、室温や環境の配慮ができたらと思い「自分だったら寒いところはつらいだろう」と思ってやったことを喜んでもらえた。

①②を考えたとき二つの出来事が統合された。私は、患者さんが家族だったらとか自分が患者だったらと考えることが多い。常に、こんな風に対応をすれば家族の方は解りやすいだろうかとか、こんな説明があれば不安が軽減されるのではないかと考えたり、自分が患者だったらこんな風にしてほしいとか、こんな対応はいやだなあとか考えて看護している。業務でいやなこととか辛いことがあっても、すべてそこには痛い思いや辛い思いをしている患者さんが存在しているので、私のできる範囲で何か力になりたいと思う。   

ライブの会からのメッセージ

私たち看護師は、「患者さんのために」という言葉をよく使います。ほとんどの看護師はこの価値観のもとに日々の看護を行っています。しかし、患者さんに届いた想いとそうでなかった想いが存在するのも事実です。

そこにどんな違いがあるのでしょうか。これを書いてくれた看護師は、②の場面で患者さんの反応をきちんと見ています。当たり前のことのようですが、日々業務に追われているとワークシートの中の項目を優先してしまい、患者さんの反応をきちんと見ていない時もあります。経験を積んだ看護師は、患者の反応を見るという行為の重要性をきちんと理解して自分の中で自然な行為として行なっているのだと思います。私たちの看護が患者さんの想いに沿ったものになったかどうかは、患者さんの反応をきちんと観察しなければ、確認することは出来ないでしょう。

私たちが持っている暗黙知は、このように連続して行なわれる日常の看護の中にちゃんと存在しているのです。