病気を持ちながらでも、健やかに成長してもらうための援助~思春期における潰瘍性大腸炎患児の継続看護~

生活記入表により、患者さんと看護師、そして医師が共通の認識を持つことができた

これは、潰瘍性大腸炎の悪化で紹介入院となった女子中学生に対して行ったライフステージに応じた看護と生活援助、継続看護の取り組みについてのお話です。私たちが小児看護を行う上で大切にしていることは、「病気を持ちながらでも、健やかに成長してもらうための援助」です。入院中に不安を解消してもらい、自宅に帰っても困らない看護を目指しています。この患者さんは、潰瘍性大腸炎の主な症状である血便、下痢、腹痛のすべてがあり、グレード4の状態でした。入院するまでは、プレドニンの内服を増量していましたが、当院に専門医がいるので紹介入院となりました。宿題は早々に済ませ、テスト勉強を自主的に行うようなとても真面目な方でしたが、一方で控えめな性格で、思っていることを表現することは少なく、痛みがあってもこちらから聞くまでは我慢している様子がありました。ただ、症状を把握するためには、正確な症状を伝えてもらわなければなりません。そこで、以前、クローン病の患児に使った生活記入表を使用しました。これは、便の状態を知るためのブリストルスケール、血便のスケール、腹痛のスケールのイラストを用いてわかりやすく描かれたもので、経時的に表現できるようになっています。一緒に観便を行い、看護師と患者さんによって同じスケールが付けられるように意識の統一を図りました。生活記入表は、誰が見ても経過がわかりやすく、症状の把握がしやすいので、医師との連携も取りやすくなっただけでなく、患者さんと自然に会話ができ、コミュニケーションを取る機会が増えました。こうして、患者さんと看護師、そして医師が共通の認識を持つことができるようになりました。

薬の飲み方、食事制限中の食事、日常のケアで気分転換・・・患者視点に立った看護を実践

栄養療法としては、絶食の後にエレンタールから始まり、ラコールが開始されましたが、飲み辛い味がするので、あまり摂取できませんでした。そこで、薬剤師や栄養士に相談し、飲み方や形状の工夫をしました。フレバーでの味付け、ゼリー状、ムース状、プリンなどの工夫を重ねた結果、ココア味を好まれ、目標量を飲めるようになりました。食事開始時も、低栄養状態を改善するために許可の範囲内で、できるだけ食べやすいものを栄養課に聞き取り依頼し対応してもらいました。食べたいものを聞いても自分から言うことはありませんでしたが、生活記入表のフリースペースに希望を書いてくれることもありました。そんな時は、主治医に相談して、希望の食べ物の可否を確認し、食事制限の中でも食事に楽しみが見つけられるように関わりました。「自分の好みのものが出るようになったと思う」と、食事内容にも興味を持ちながら食事できるようになりました。中学生なので、入院の長期化は学校生活への不安、勉学のことなど社会的不安を抱える時期でした。ただ、私たちが関わらなくても自主的に勉強をしてたので、その姿勢を褒めることでモチベーションの向上につながったと思います。また、気分転換のために、許可が出れば、院内の散歩を促しました。シャワー浴も毎日できるように関わり、日常のケアが気分転換につながるように、また、生活にリズムができるように関わりました。

最も大事にしたことは、病気だけを看るのではなく、社会的背景を大切にすること

退院に向けて、自宅での生活、学校生活、とりわけ給食、体育、部活動、楽しみにしている修学旅行のことについても確認が必要だったので学校側とカンファレンスを実施しました。主治医に確認をしたところ、退院時には、家庭、学校での食事は普段通りでよく、体育や部活動の制限はありませんでした。また、内服も朝夕の服用だったので、学校で服用することもなく、学校という集団生活の中でも食事も運動も制限なく、友達の目を気にすることなく過ごせることに安心できたようです。退院後も、生活記入表は継続してもらい、退院時には病棟外来連絡票を使って外来に継続依頼をしました。初回受診日には、毎日記入できた生活記入表を持参しており、退院後の症状を知ってもらうことができました。表現するのが苦手なため、コミュニケーションを取るのが難しい時でも、生活記入表を通じて継続看護をすることができました。潰瘍性大腸炎の治療は長期に渡るので、中断することなく継続できるように援助していく必要があります。入院中に限らず、退院後も治療の継続ができているかの確認が大切です。
私たちが、この患者さんと関わるうえで最も大事にしたことは、病気だけを看るのではなく、社会的背景を大切にすることでした。その上で、以下の三つのことに取り組みました。

  1. 問題点について、部分的あるいは全面的に自立できるように継続して看護を実施する
  2. 必要な介入を判断して、他職種からの援助が受けられるように依頼する
  3. 病気を持ちながら自宅や学校で生活できるように援助する

その結果、経験値を活かした看護、患者さんの特性を踏まえた看護、外来や他部門とのスムーズな連携ができたと思います。今後は、長期にわたっての治療、多感な時期の病状の悪化、治療方針の変更などで、精神的サポートも必要になるかもしれません。これからも、ライフステージや病態に適した小児看護、継続看護を行っていけるよう、臨床心理士との連携も視野に入れて、他部門との連携を図っていきたいと思います。