外来から始める継続看護とチーム医療~外来で看護師たちが具体的に何をしているかをご存知ですか?~

日常生活に踏み込んだアセスメントの必要性から糖尿病療養指導士との面談を提案

これは、ある糖尿病患者さんに行った外来から始めた継続看護とチーム医療のお話です。この患者さんA氏は69歳男性で、胸部に違和感を感じ、かかりつけ医を受診された後、心筋梗塞の疑いで紹介を受け来院されました。来院当日にPCI治療を行いました。糖尿病を患われており、かかりつけ医で内服治療をされていましたが、HbA1cは9.2%とうまくコントロールはされていない状態でした。その後、PCI治療を3度行った後に、再びかかりつけ医にて内服治療を継続することになりました。2か月後に来院された時には、HbA1cが11.1%まで上昇していました。医師に生活習慣の見直しを指導されましたが、それに対してA氏は「薬の効果がないのなら、かかりつけ医を変えようか?」という認識でした。そこで、担当看護師はA氏の日常生活にもう少し踏み込んだアセスメントの必要性を感じたので、外来所属のCDEJ(糖尿病療養指導士)※1との面談を提案し実施しました。CDEJとの面談において、食事については一般的に「これは糖尿病にはいいよ」と言われたものをすべて試していたことがわかりました。例えば、甘酒やチョコレートがいいと聞かされれば、それを進んで食べるといった感じでした。また、薬の飲み忘れが多いこともわかりました。A氏は仕事の関係で出張や接待のため外食が多く、生活を急に変えるのは難しいことを理解したうえで、日常生活を改善することでHbA1cが徐々に下がっていくことを丁寧に説明し、かかりつけ医による治療の継続を指導しました。A氏も「できることからやっていきます」と前向きに捉えてくれました。この面談内容をすぐに循環器の担当医師に報告し、かかりつけ医に対して半年後の受診まで糖尿のコントロールの依頼についても診療情報提供書に記載してもらいました。

生活習慣の改善を目的に教育入院の提案、そして、血糖値の安定と行動変容に成果

それから半年が経ち、A氏が来院されました。事前の心筋シンチの結果が思わしくなく、HbA1cは、12.9%まで悪化していました。医師から生活習慣の改善の必要性を再度指導され、糖尿病教育入院を勧められました。入院に対して前向きな意志があったので、代謝科の医師の受診後、入院日程を決め、同時にインスリン、FMG※2(血糖自己測定)の導入を行いました。インスリン導入翌日に、CDEJがA氏のご自宅に連絡をし、困っていることはないか、また、グルコース値について確認しました。グルコース値が300台であったので、主治医に報告し、インスリン増量の指示を受け、指導しました。外来看護師は、教育入院までに、病棟外来連絡票を記載するなど病棟との連携を取りました。また、入院後は外来のCDEJが病棟に出向き、FMGの指導をしました。こうして医師、病棟・外来の看護師を始め、様々なコメディカルが関わった10日間の教育入院が終了しました。退院後初回の外来受診時に、ご自宅での生活において、インスリン注射が問題なく行えていること、リブレの装着にトラブルがないこと、運動を継続していることなどが確認できました。教育入院後、HbA1cは7%台までに下がり、目標とするセルフケア行動が行えています。

「何に困っているのか」・・・患者さんの生活に着目して、最適な看護ケアの提供を大事にしたい

私たち外来看護師は、「その人がその人らしく生きるために」を大切にし、そのためにはどのような看護が必要なのか、また、連携が必要なのかを常に考えています。疾患や障害を持った患者さんが、住み慣れた地域で生活の質(QOL)を保ち、最適と思われる看護ケアが継続的に提供できるように私たちの看護の質を向上させたいということがその想いの源泉です。今回のように患者さんが治療行為の主体である疾患に対して、A氏の実際の生活を理解した上で行動変容につながる介入をしたことが、生活習慣の見直しにつながったのだと思います。そこには外来の循環器担当看護師からCEDJへの連携、看護師が提案しての担当医師からかかりつけ医への連携、循環器の医師と代謝科の医師の連携、外来と病棟などの連携がスムーズに行えたこともその大きな要因だと思います。外来看護は、患者さんと長期間にわたって関わるので、生活に根ざした視点が特に大切だと考えています。何に困っているのか、何が必要なのか、その人その人の生活の中にある課題に着目して看護をしていきたいと考えています。外来では、退院後初回受診時の全ての患者さんに対して、待ち時間を利用して食事や排泄、移動など自宅での生活で困っていることはないかを確認し、必要であればしかるべき部署と連携を取るようにしていることは最もそれを表していることだと思います。

CDEJ(糖尿病療養指導士)※1
CDEJ (日本糖尿病療養指導士)とは、糖尿病治療にもっとも大切な自己管理(療養)を患者に指導する医療スタッフです。高度でかつ幅広い専門知識をもち、患者の糖尿病セルフケアを支援します。
この資格は、一定の経験を有し試験に合格した看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士に与えられ、2001年3月に第1回認定試験が行われました。CDEJに認定されることは、糖尿病の臨床における生活指導のエキスパートであることを意味します。糖尿病患者の療養指導は糖尿病の治療そのものであるとする立場から、患者に対する療養指導業務は、わが国の医療法で定められたそれぞれの医療職の業務に則って行われます。

「一般社団法人日本糖尿病療養指導士認定機構」による

FMG(Flash Glucose Monitoring)※2
「FMG」は、皮下に入れたセンサーで間質液中のグルコース濃度を連続的に測定し、リーダーでスキャンすることで、連続測定したグルコース濃度の変動パターンを表示するグルコースモニタリングシステム。得られたグルコース濃度の測定値から、自己血糖値測定による血糖値トレンドを推定し、糖尿病の血糖コントロールをサポートする。 

「糖尿病ネットワーク」による