看護師さんの姿にあこがれて

201501-story中浦裕子
子どものころから漠然と「将来は病院で働きたい」と思っていた私。しかし高校生になるまで看護師になりたいと思ったことはありませんでした。その気持ちが変わったのは、高校3年生の春に、友達に誘われて参加した看護師の1日体験でした。それまで看護師のイメージは、医師の手伝いをする人というもので、魅力的だと思っていませんでした。けれども、実際に目にした看護師さんは、自分で考え判断し、自律されていると感じたのです。みなさん患者さまに笑顔で接し、活き活きしているように見えました。その日から「患者さんに最も近い存在の看護師を目指そう」と思うようになったのです。
当院への就職を選んだのは、急性期から在宅まで幅広い領域があることと、地域の中核病院で経験を積みたいと思ったのが理由。そして就職し、急性期の病棟に配属となりました。
はじめは業務をこなすことで精いっぱい。高校生の頃に出会った看護師さんのように、自分で考えて行動できるようになったのは、5年が過ぎたころのように振り返ります。

“その人らしさ”を考慮して援助を考えたい

日頃から看護師として心掛けているのは、誠実な態度で人と接するということです。看護するうえで、信頼関係は欠かせませんが、職員みんなで築いた信頼も、一人の軽率な対応で一瞬にして崩れる事もあると思うんです。そんなことにならないように、常に誠実さを心に留めて仕事をしようと思っています。
また、患者さまに対して、“その人らしさ”を考えるようにも心掛けています。そう思うようになったきっかけは、ある患者さまとの出会いでした。
それは、私がICUに勤務していた時のこと。あるとき、自殺未遂の20代の女性が入院されました。状態は悪く、回復の見込みは薄い方でしたが、爪を見るとネイルの跡があり、「きっとおしゃれに気を使っている方なのだろう」ということが垣間見られました。そんなことを思いながら、ただ何気なく、もつれた髪をとかして結ってみたのです。するとそれを見たお母さんがとても感激してくださいました。深く考えてやったことではなかったのですが、その時、私はこのとき患者さまの負傷する前の姿を捉えて関わったということに気が付きました。私はそれまで「○○疾患の○○さん」という視点で患者さまを捉え、身体面を先に見てしまっていたと反省したのです。そして、これからは「こんな○○さんが○○疾患でこのような状態だ」というように、その人らしさを捉えて援助を考えようと思いました。

看護の魅力は“尽きない”というところ

今は緩和ケア病棟に勤務しています。急性期看護しかしたことがなかった私は、異動が決まった時は不安でいっぱいでした。でもやってみて思ったのは「看護の土台はどこでも同じだ」ということでした。そして緩和ケア病棟に勤務して、これまで以上に看護の持つ力を強く感じるようにもなりました。そして今後は、この看護の力を後輩に伝えていくことが課題だと思っています。今は副主任という役割をいただいていますが、新人や学生を指導すると、鋭い感性で私が気づかないことを伝えてくれることも多く、新たな視点が発見できる面白さを感じます。だから、もっと人材育成について学び、後輩の育成にかかわっていきたいと考えています。
また、今はワーク・ライフ・バランス推進チームのメンバーという役割もいただいていますが、院内にワーク・ライフ・バランスにかかわる制度を継続的に維持させるためには、継続できる環境づくりが必要ではないでしょうか。そのためには、制度を使うことをあたり前だと思うのではなく、“誰かが支えてくれているから制度を利用できる”という感謝の気持ちを養うことや、子育て中の看護師同士が支えあえる仕組みづくりなどを考えることが必要であり、それが今後の私のミッションなのだと思います。
私が考える看護の魅力は、“探求すればするほど新しい発見があり、尽きない仕事だ”ということ。この魅力ある看護を多くの人が継続できるように、働く環境を整えることにも尽力したいと思います。

 

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緩和ケア病棟 師長 佐藤 愛子

中浦さんは、26年4月から育休明けで緩和ケア病棟へ異動となりました。異動してきた時から、常に患者さんや家族の話をよく聴き、笑顔で接する姿勢が印象的でした。患者さんの症状を緩和するために、何か出来ることはないかと考え、カンファレンスの際にも積極的に発言してくれることが他のスタッフへの刺激にもなっています。育児と仕事を両立させながら頑張る姿は、後輩にとっても心強いものだと思います。副主任として、スタッフの役割モデルとなって、患者さんや家族のケアの充実を図っていってくれることを期待しています。