母からの厳しい言葉を胸に

mitoyo-1506-story01看護師 橋田祐弥
「将来は人の役に立つ仕事がしたい」これは幼い頃からずっと思っていたことですが、看護師になろうと思ってはいませんでした。というのも、私の母は看護師であり、幼い頃は、いつも帰りが遅い母を待つ毎日が寂しくて、母の時間を奪う看護の仕事に良いイメージを持っていなかったからです。
しかし高校生で進路を決める時期になり、テレビやインターネットで看護師の仕事を知るほどに興味が沸いてきて、看護へのイメージがどんどんプラスに傾きました。母に相談すると「いい加減な気持ちで務まる仕事ではない。中途半端な気持ちならやめなさい」と言われたのですが、諦めたくないと思い、高校生まで野球部で鍛えた精神を看護にぶつけてみようと決めました。そしてまずは准看護師を取得して働きながら看護師の資格を取得し、当院に就職したのは4年前のことでした。

相手の立場で考えることを大切に

当院では手術室に配属となり、それ以来手術室看護をしています。これまで先輩に頼ってばかりだった私も、昨年はプリセプターを経験しました。プリセプターになって実感したのは、教えることの難しさ。そして、自分が根拠立てて考えられていなかったことにも気がつきました。教えるためには自分が学ばねばなりません。そのため、プリセプターをすることで、自分自身が成長できたと思います。また、この経験を通して「どう言えば理解してくれるか?」とか「こう思っているのかな?」というように、相手の立場で物事を考えるようになったのも自分自身の変化です。
この「相手の立場で考える」というのは、患者さんに対しても同じです。余裕がないときはやるべき仕事で精一杯でしたが、手術室看護こそ、患者さんの立場で考えて想像しなければ務まりません。というのも、手術というのは患者さんの不安は測り知れず、そんな不安を察して言葉をかけるのはもちろんのこと、術中は意識がない患者さんの代弁者となるのが看護です。だから、不用意な圧迫がないかなど細かく観察し、安全と安楽を守るため、患者さんの身になって考えるようにしています。

積極的に術野を見ようと心がける

これまでで忘れられないのは、新人の頃に器械出しをした開腹術の患者さんが、術後止血術で戻ってこられたときのことです。術直後、ホッとしている私に対して先輩は「ドレーンの排液が赤いね」と言われたのですが、私はあまり気に止めず、その患者さんはそのまま病棟に戻りました。しかしその日のうちに止血のため再手術で戻って来られました。その時感じたのは、再手術を防ぐ手立ては自分にあったはずだという後悔。その日から、ただ器械を渡すのではなく、手術に参加して異変に気づけるよう、積極的に術野を見ようと心がけています。
手術室看護には、器械出しと外回りの役割がありますが、器械出しのやりがいは、流れるように器械を渡して手術がスムーズに終了したときに味わう達成感。また外回りのやりがいは、患者さんから感謝の言葉を頂けたとき。術前訪問でお会いして、術後訪問に伺った時に「居てくれたから安心したわ」というような言葉を頂くと、自分が役に立てた喜びでいっぱいになります。
これからの課題は、急変などがあった時にも冷静に対応できる力をつけることです。そのためには知識を高めるとともに、普段から予測しながら行動し、いざという時に焦らないようシミュレーションを重ねていこうと考えています。