変化する訪問看護へのニーズ

201503-story訪問看護ステーション 大江美樹
私が訪問看護を始めてから、概ね25年が過ぎました。当時は今のように訪問看護は一般的ではなく、介護保険制度や訪問看護ステーションは、まだ日本にはありませんでした。
私が訪問看護を始めたころは、地域の保健師と情報を交換し、当院を退院された方の自宅に様子を見に行ったり、医師の往診に同行したりというような形で訪問していたのですが、平成7年に、当院の訪問看護ステーションが発足し、その後に介護保険法が制定され、訪問看護は社会的に認知されるようになり、訪問看護師の数も増えていきました。当時は寝たきり高齢者のご自宅を訪問し、ケアを行うことが多かったのですが、最近では気管切開・胃瘻・点滴ポートなど医療処置が必要な方を訪問する件数が増えています。

訪問看護は2~3日後を予測したケアが必要

近年は病院の機能分化と在院日数の短縮化により、病院ですべて完結することが困難となってきています。そのため急性期を脱したらすぐ退院になることもあるため、在宅療養者は看護度の高い人が多くなり、今の私たちに求められているのは介護職と上手に協働して役割を分担しながら、看護の力を発揮することだと思います。
訪問看護のやりがいは、ひとりの人に深くかかわることができ、看護が独自に考えて介入し、その人の生活の質を高める援助ができるところです。自宅で暮らすのは難しいと考えられる人であっても、私たちが関わることで在宅療養が可能になり、笑顔を見ることができると大きな喜びを感じます。
また難しいのは、先を見ながら看護ケアの質を保つというところ。病棟であれば、24時間看護師が患者さんの近くにいますが、私たち訪問看護師は、今日ケアをしたら、だいたい次は2~3日後にしかお会いすることができません。1つ1つのケアを丁寧に、また小さな異常も見落とさない観察を行い、次の訪問までにトラブルがないよう配慮するのが難しくもあり、その責任がやりがいにもつながります。

看護の技を伝えていきたい

現在、当訪問看護ステーションの利用者さんは、約8割が当院を退院された方ですが、これからはもっと幅広く、地域の訪問看護ステーションとして多くの人が利用できるよう、機能を広げていきたいと思っています。そのためには、もっと地域にPRを行い、地域に困った人がいれば、惜しみなく支援の手を差し伸べていこうと考えています。
また、私個人の目標は、安心してケアを任せられる後輩を育てていきたいということ。それは看護職に限ったことではなく、介護職の方に対しても、長年の経験で培った日常生活援助の技を伝えていけたらと考えています。それが、専門職業人として先を歩む者の使命だと思うからです。