新人の頃に感じた、母子2人の命を預かる大変さと「いてくれて安心した」という言葉への嬉しさ

助産師 山地亜弥
私が助産師を目指すきっかけになったのは、大学時代の実習で、お産に立ち合ったことです。命の誕生から関わることができる責任ある仕事で、大きなやりがいを感じることができる仕事であると思いました。その後、助産師になるために大学の専攻科に進み、この病院に助産師として就職しました。新人の頃を振り返ると、母子2人の命を預かる大変さを味わいました。特に、担当している患者さんのお産を取る際に、自信を持てない状態で、他のスタッフを指揮して、声を掛け、動いてもらうように指示するなど、不安になりながらリーダーシップを取ることに苦労しました。どの患者さんに対しても、誰が担当しても、当院の看護の質を保証しなければならない責任を感じながら仕事をしていました。大きなミスをしないように、患者さんに害が及ばないように、細心の注意を払うためにも、先輩たちにいろいろなことを聞き、考える機会をもらい、時には励ましてもらって一つひとつ着実に成長できたということが思い出されます。「いてくれて安心した」と言ってもらえたり、ご夫婦がお父さん、お母さんになっていく姿を見ると、嬉しい気持ちになれました。

お母さんが赤ちゃんのためにできていることを認めて、育児ができていることを勇気づけていきたい

私が看護をする上で大切にしていることは、お母さんが自分で決められるように支援することです。私たちの看護部のクレドでいうと、1と2を特に意識しています。はじめてお母さんになる人は、すべてが初めての経験なので、「どうしよう、どうしよう」と自分を責めがちな方が多いです。特に、産後に不安が募り、自信を持てない患者さんには、初めからすべてができるお母さんはいないので、長く育児ができていくようにするために、お母さんが赤ちゃんのためにできていることを認めて、一つひとつ確実に育児ができていることを勇気づけていくようにしています。そういった関わりをすることで、患者さんも、私たちにいろいろなことを話してくれるので、私たちも適切な関わりができるようになります。また、当院の風土だと思いますが、看護部のクレドを使って、自分たちの看護を振り返る機会があるので、特にカンファレンスでは、自分の看護が適切であるかどうかをしっかりと考える機会があり、より適切な看護を提供できる環境があると思います。不安な表情で曇りがちだった患者さんが、退院する時には明るい表情になっていることが私のやりがいです。

先入観を持たず、適切な関わりを。そして、退院後も含め、長い目でお母さんと関わっていきたい

育児においては、母乳が良いという話は一般的な認識かと思います。私もそう思っていました。母乳が出ない患者さんに対しても、母乳が出るようにするのが支援だと思っていました。母乳を勧めるがあまり、頻回に授乳をし、睡眠が取れなくなり、疲れ切った患者さんがいました。私は、患者さんの希望ではなく、母乳育児を進めたい私の希望を押し付けていたのではないかと猛省した経験があります。そこで、ミルクの有効活用に対して視野が拡がりました。入院という短期間で育児を見るのではなく、退院後も含めた長い目で関わること、基本はお母さんの希望に沿うことを強く意識するようになりました。母乳が出なかった患者さんが、退院後、母乳が出るようになることも多々あり、先入観を持たずに、適切な関わりを考えさせられた転機になる経験でした。先輩たちの手厚い指導や新人のみならず、有効な教育システムに支えられて、これまで4年半良い仕事に就いたと実感できています。今後は、マタニティヨガの資格取得をチャレンジするなども含めて、様々な関わりの機会を通して、お母さんに還元していきたいと思います。