看護は人生に影響を与える仕事

month-nurse57土岐祐子
大学の法学部を卒業した私は、大学院で法学の研究をしていました。同じゼミに看護教員をしている院生がいたことから、看護の世界に興味を持つようになったのですが、その頃はまさか自分が看護師になるとは思っていませんでした。
その後、父が倒れたために実家に戻った私は、父の仕事であった保険の代理店業務を担うようになりました。事故後の処理で警察や弁護士さんとやり取りをすることも多く、約3年は新しい世界に身をおいて楽しく仕事をしていたのです。しかし将来を見据え、「歳をとっても自立して社会で活躍したい」そう思った時に、友人に勧められたのが看護師になることでした。
元々興味を持っていたので、看護師になりたいというよりも、女性が自立できる仕事として看護の世界を覗いて見ようという気持ちで大学の看護学部に進学。そして看護を学ぶうちに、この仕事は、自分の存在が相手の人生に影響を与えるやりがいある仕事だと思うようになりました。
.それまでは、医療は医師が担い、看護師はそれをサポートする人といったイメージを持っていましたが、実際は、看護師自らが患者さまと対峙し、患者さまの回復力を引きだしたり、その後の人生を共に考えたりするのが看護であり、私のやりたいことはこれだと思うようになったのです。

チームの協力が患者中心の看護の基本

2度目の大学卒業時には、看護師になることを決めて大学病院に就職。その後、家族とともに私が産まれ育ったこの地に戻ってきたため、当院に就職することになりました。
当院は、私が里帰り出産をした病院であり、入院時に良いイメージを持っていたので安心して就職を決意することができました。当院に就職するまでは小児看護の経験しかなく、一からのスタートだったのですが、周りのスタッフに温かく支えていただけたのは、今も感謝するばかりです。
就職時は、急性期の病棟に配属されたのですが、今は緩和ケア病棟で勤務しています。緩和ケア病棟は、人生の最期の時間を穏やかに過ごしていただくための場所。スタッフ全員が患者さまのことを第一に考え、充分時間をかけてケアできることがやりがいにつながります。
時には、死の恐怖を露わにして傍にいることを望まれる場面も。そんな時は手を握り、落ち着かれるまで時間を共に過ごし、他のスタッフがその他の患者さまのケアをフォローするのですが、そんな風に、チームが協力し合えてこそ、患者中心の看護が実現できるのだと思います。

価値観は多様だから

看護師になったばかりのころは「自分だったらどうしてほしいか」という視点で援助を考えるのがベストだと思っていました。そして私は、自分がやってほしい援助をして差し上げることに満足を覚えていたのですが、経験を積むうちに、それは押しつけの援助で自己満足だったような気がします。
自分がいいと思うことは、必ず他人もいいと思うわけではないはずです。人によって価値観は違い、してほしいことだって違うはず。だから今は、他のスタッフの意見を求めながら、患者さまやご家族を巻き込んで一緒に援助を考えることが大切だと思っています。
遠回りをして看護師になった私なので、その道のりで得た知識や経験を看護に活かすことがこれからの課題のような気がします。しかし、小さな子どもが2人いるので、今は仕事と家庭の両立で精一杯。やりたいことはたくさんあるのですが、出来ないのが現状ですが、無理をせずに足元を見ながら、今自分が出来る範囲で力を尽くし、子どもの成長と共に時間を見つけ、徐々に自分にしかできない看護を考えていければいいなと思っています。

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