看護師の仕事の奥深さや責任の重さに戸惑う新人時代

石川綾夏
私は、高校時代にボランティア部というクラブに所属し、清掃をはじめ、お年寄りの方に食事の介助をしたり、障害を持つ子供たちと遊んだりしていました。人に関わることやお世話することが大好きで、看護師を真剣に目指すようになりました。そんな私が看護師なったばかりの頃、職業として仕事をするのは大きく違うんだということを感じました。人が亡くなるという現実や重い病気を持つ人との関わりにおいて、自分が様々なこと受け止めないといけないことに悩みました。良くなる患者様もいますが、しんどくて殻に閉じこもり、うまく気持ちを伝えられない患者様に適切な対応ができずに、人と関わることが好きだと思っていた私も、看護師の仕事の奥深さや責任の重さに戸惑いを感じたこともありました。ただ、仕事をしているうちに、一人一人、患者様はみな違う、答えは一つではないということがわかりはじめて、カンファレンスで先輩たちにいろいろとアドバイスを求めているうちに、自分で考えて患者様に接していくことが楽しくなってきました。患者様が何を求めているのか、そのご家族との話などから背景が見えてきて、日々勉強の精神で仕事をしているうちに「あなただから話せる」と言っていただけることもあり、看護師の仕事を楽しめるようになってきました。

患者様のネガティブな言葉にも、何を考えているのかを受け止める

この病院に入職して2年目の頃、私にとって看護師としての転機になることがありました。胃がんを患われていて、抗がん剤治療をし、入退院を繰り返されている患者様との関わりの中でのことでした。初めは、私が担当していました。私の職場ではチームが2つあり、その患者様は入院ごとにAチームが担当したり、Bチームが担当したりということで、途中から担当を外れていました。しかし、気になっていたのでチームが変わっても病室に伺っていました。しかし、容態が悪くなるにつれ、ご家族との時間を大切にして頂いた方がいいと思い、病室への訪問を遠慮していました。患者様が亡くなられた時に、ご家族から「石川さん、これまでありがとうございました」と感謝の言葉を掛けられた時に、もっと患者様に対してできることがあったのではないか、患者様に対して自分自身の逃げていた部分に心が痛みました。それを機に、がんを患っている患者様やご家族への対応について、真剣に学ぼうと研修を受け、学んだことを現場でどう活かすかを考え、実践するようにしています。例えば、患者さまが「もう、死にたい」と仰ることがよくありますが、これまでの私なら「そんな悲しいことを言わないで下さい」と言っていました。それは、私が悲しくて聞きたくない言葉だからですね。でも、今は「どうして?」と患者様の考えを聴き、何を求めているのかを理解するために受け止めるようにしています。あくまでも患者様の立場に立つことを心掛けています。

ワンランクアップの看護で、求められていることを返せる看護師になりたい

今、目標の一つにしているのはがんに関する認定看護師の資格を取得することです。患者様もそうですが、ご家族もがんと宣告されるとそのショックはかなり大きいものです。治る人もいれば、治らない人もいますし、そもそも命が果てるのは人間みな同じなんですが、悪い方向でものを考えるのではなく、最期を迎えられる時に患者様もご家族もできる限り悔いが残らないように、求められていることを返せる看護師になりたいと思っています。認定看護師の資格を取りたいのはそうしたワンランクアップの看護を目指したいからです。私の上司である師長の患者様やご家族との関わり方、コミュニケーションの取り方は、一緒にいて、「見事だなあ」という他ありません。自分の近くに学ぶべきお手本となる上司がいるのも幸運なことですが、そのことが私の看護師としてのキャリアアップに対するモチベーションにつながっています。これから巡り合う予想できないすべて患者様との関りを自分の学びと捉え、経験や知識を積み上げて、早く師長のような関わり方ができる看護師に成長出来ればと思っています。