ある看護師の語り-コスモス研修で出てきたストーリー④

MMKでターミナルステージに入った48歳の患者さん、胸水が貯留し呼吸困難がありながら、個室にひとりでいることが多かったのです。排痰困難な時はパニック状態になることもあり、そんな時、看護師は病室から中々出られないようなこともありました。
ちょうど私が夜勤の時、その患者さんが呼吸困難となりました。SPO2が低下し、レスキュー薬を投与して呼吸法やスクイージングを実施。レスキュー薬を2回内服して少し呼吸は落ち着いたものの不安感が強く、その夜は、患者さんのそばで手を握りながら電子カルテを打ち、ベッドサイドで見守りました。

患者の気持ちに寄り添いたい

私より年上で何をするにも否定的な気難しい患者さんだったのですが、不安を訴える姿は子どものようで、自分は母親のような気持ちになっていました。内服が一番の症状緩和になったのかもしれないですが、私も患者さんを一人にはできないと思ってスクイージングや呼吸法、タッチングを提供。患者さんは援助する私を頼りにすがってくださり、そのとき、寄り添う看護ができたのかもしれないと感じました。
ターミナルステージの患者さんの苦痛や死への恐怖、不安の軽減の難しさを考えると病室へ足を運ぶ事に少し抵抗を感じる時があるのは事実です。でも私はそのような患者さんほど足を運ぶように心がけています。ナースコールが頻回な患者さんは「またナースコール…」という声がナースステーションで時々つぶやかれます。でも、痛いから痛み止め、吐き気があるから吐き気止めというような対応ではなく、患者さんはナースコールで何を伝えたいのか?という心の奥を読んで、患者さんの気持ちに寄り添う看護、心の看護をしたいと思います。患者さんの苦痛から逃げずに向かい合い、患者さんにとってかゆい所に手が届く看護師でいたい私です。

ライブ退院調整での出来事

脳梗塞で入院していた40歳代の患者さん。自宅に退院することを希望してリハビリを頑張っておられました。小学生の娘さんが二人おり、普段の会話から娘さんのことをとても気にしている事が理解できる方でした。
廊下歩行も少しずつ安定し、左手も空のお茶碗なら持てるようになっていた患者さんは、入院当初は転院方向で退院調整を進めていたものの、症状が予想より改善したため自宅退院を希望されるようになり、受け持ち看護師の私が相談を受けたのです。私は家庭の事情や患者さんの思いを聞き、「家に帰って子供たちと一緒に居たい、子供たちの世話をしたい」という気持ちが、同じ母親として痛いほどわかりました。
何とか患者さんの望みをかなえたいと思い、医師や理学療法士と相談したのですが、転院でリハビリを続けるほうがいいという結論に至って転院になってしまいました。振り返ると、この患者さんにとって良かったのかどうか今となっては分かりません。
治療に関することは、患者さんに十分に説明がなされ納得してもらわなければならないのですが、私は、それも含めて患者さんが一番望んでいる事をできるだけ叶えられる支援がしたいと思います。退院調整の場面では、自宅に帰りたいという思いの患者さんは多く、いろいろな事情や状況を踏まえて、看護師が患者や家族と意見交換や情報交換を十分にすることが必要だと思います。特に、高齢者の場合は、人生の最後になるかもしれない時期をどこで過ごすのかを自分で決めてもよいのではないかと考えさせられました。