価値ある看護の手-コスモス研修で出てきたストーリー②

緩和ケアに入院していた患者Aさんは、乳癌で上下肢共に浮腫でパンパンだった。毎日、メドマでマッサージしたり圧迫包帯で浮腫を防いだりしていたけれど、それだけでは浮腫によるだるさが取れず、自分でしたいこともままならない状況だった。Aさんが楽しみに待っていたのは、私がお湯で温めて四肢をマッサージすることだった。日勤で受け持ちになると必ず行い、うれしいうれしいと喜んでいただけた。最近も若い女性の患者さんにマッサージを少しだけ行い、凄い凄いと感激され自分もうれしくなった。いつもなら、時間がかかる看護は後回しにして、時間に追われて流れ作業のように看護ケアをしている。しかし、患者のストレスや不安などを少しでも和らげることができたり、ちょっとした事で気持ちが良かったり気分が晴れるなど、気持ちに前向きな変化をつけることができたら嬉しい。

「病は気から」と昔から言われているように、気の持ち方で病気に対する心構えや意欲が変わると感じている。最近は、人より多く働くと損をすると考えている人が多くなったように思う。自分にはこれができると自信を持って言えることがあれば、患者さんに実践することで、患者さんだけでなく自分へのプラスにもなると思います。

ライブの会からのメッセージ

経験を積んだ看護師は、「得意な分野」「好きな看護」のようなものを多くの場合持っています。それは長年の経験に基づいて形成されたもので、それぞれの看護師によって違いがあります。しかし、看護師には人事異動がありその経験を、十分に活かせる部署とそうでない部署があるかもしれません。

しかし、考えてみましょう。その看護を受け取る患者さんは、例えば外科の看護だけをあるいは内科の看護だけを受けに来ているのでしょうか。患者さんは、ひとりの患者として存在しているのであって、外科の患者あるいは内科の患者として存在しているのではありません。この看護場面もそのような場面の1コマです。リンパマッサージは緩和ケアだけの看護ではなく、どの部署にもいる浮腫に対する看護なのです。

看護師は、医師のように分野に限った視点ではなく、人事異動によって獲得した経験をどの患者さんにも提供することができます。看護師はどの部署に行っても、自分の強みを発揮して目の前にいる患者さんに対応する事ができるのです。そして、得意分野に違いがある看護師が、多く存在しているからこそ患者さんを多角的に看ることができるのではないでしょうか。

またこの看護師は、時間のかかる手間のかかる看護が、次第に少なくなっているのではないかと危惧しています。私たちの看護の価値が、本当の意味で患者さんに伝わる手段はどの様なものなのか考えてみたいと思います。