西5病棟 看護師長 

患者さんを中心にスケジュールを組みたい 福田京子

森安)西5病棟は忙しいイメージがあるのだけれど、病棟スタッフの様子はどうですか?

福田)患者さんのスケジュールについて、これまでは、病棟でのケア、リハビリの予定、検査の予定など、それぞれの部門が独自に計画を立てており、ケアの途中でリハから呼ばれてリハに待ってもらったり、ケアをしようと思ったら、リハに呼ばれてケアが後回しになったり、また、リハから帰ってすぐにまた検査に呼ばれたりと、患者さんも振り回されてご迷惑だし、看護師も業務が上手く回らずイライラして他の部門との関係もギスギスするといった状況がありました。

森安)それは他の病棟でも多少なりともあるのかもしれませんね。それをどのように対策したのですか?

福田)まだ試行錯誤の段階ですが、患者さんを中心に、1日のスケジュールをリハや検査と看護師が一緒になって計画できないかと考えています。まずはリハのPT・OTさんが立てたスケジュールから看護師がケアや検査を考慮に入れて予定を変更することでだいぶスムーズになりました。

森安)それはいいことよね・・・。病棟にいると、どうしても自分たち中心に考えてしまい「どうして考慮してくれないのよ!」なんて、相手を責めてしまいがち。それは相手も同じことなんだけれど、そうして関係性が悪くなると結果的に患者さんを犠牲にしてしまう。それを予防するには、Win-Winの関係を保つことが必要であり、そんな交渉場面を師長がスタッフに見せていく必要がありますね。

福田)歩み寄るって大切ですね。看護師がリハや検査の立場も理解してスケジュールを立てることでお互い譲り合いの精神も生まれるし、ケアの予定も立てやすくなり、最近はだいぶ業務がスムーズに回るようになっています。

看護師がマネジメントする人であってほしい

森安)それこそ、看護師のタイムマネジメントよ。昔は、患者さんの食事の時間も考えず、職員の都合で患者さんの呼び出しがあったけれど、それって患者中心の医療とはいえない。ひとりの患者さんに対して職員同士が話し合ってスケジュールを立てることこそ患者中心の医療であり、それをマネジメントするのが患者さんの一番近くにいる看護師であってほしいと思います。

福田)まだまだ当病棟でも充分できているとはいえない状態ですが、業務改善というよりも、患者さんを中心に考えることで業務の煩雑さも回避できるという意識を養っていくことが必要なんですね。

森安)そうよね!
それはそうと、先日“いいはなし”があったって聴いたわよ。いくつかの研修会で、西5病棟の同じ患者さんの話が出ているそうだけど。

福田)とっても嬉しいことがあったんです。というのも、脳外科の手術が長時間に及び、術後の経過が思わしくない患者さんがいらしたんです。ICUから当病棟に来られた時も意識レベルは悪く、反応はほとんどない状態。

森安)あの方は長時間の手術によく耐えてくださり、報告を受けた私たちも回復を祈っていた患者さんだったわ。

福田)看護師たちは刺激を与えるために車椅子に座っていただいたりしていました。少しずつ反応が出始めていたある時、私が何気なく「○○さん~」と手を振ったんです、すると、その方が手を振りかえしてくださったではありませんか・・・。傍にいたスタッフも驚いて、手を叩いて大よろこび!ドクターも駆け寄ってきて、みんなでその反応をよろこびました。

森安)それは嬉しいわね。みんな一生懸命関わっていたから、回復のよろこびもひとしおだったのではないかしら?業務的にケアしていただけでは、全員で手を叩きあうまでには至らない。そんな風にスタッフ全員で心から嬉しいと思えた経験が看護師のモチベーションをつくってくれるのよね。

福田)そうですね・・・。滅多にあることではないですが、そんな経験が他の患者さんへの援助への力になるんでしょうね。

森安)で、その方は今どうされているの?

福田)今は回復期リハビリ病院に転院され、リハビリに励まれているようです。転院先でも頑張っておられると思います。

看護の連携が実感できるとやりがいにつながる

森安)急性期の病院では、少し良くなれば転院なので回復された姿に出会うことが少ない分、やりがいを感じにくいのですが、急性期の看護があるから回復があるという意識を育てることが師長に求められるように思います。

福田)連携病院のある回復期リハビリ病院では、事前に訪問して患者さんの転院後の不安解消に努めてくださっているのですが、そのとき、看護師さんは当院から転院された患者さんの様子をタブレットで見せてくださるんです。すると「え…あの患者さんがここまで回復されたんだ」と感激し、看護師のやる気につながっており感謝するばかりです。

森安)そうですか、それはありがたいことですね!看護が連携して患者さんを護っているという事が実感できる取り組みですね。院内でも強化すべきところですが、病院を超えてそれが出福田)そうなんです。ありがたいです…。そんな風に、嬉しいと思える場面をいっぱいつくって、スタッフ全員が前向きに頑張ってほしいなぁと思っています。

森安)急性期の病院は忙しくて当たりまえ。でも、外来・手術室・ICU・病棟・在宅と、看護がつながっているという事が実感出来たら、忙しいという気持ちだけでなく、患者さんの回復ために今は何が出来るか?という前向きな意識が育てられると思います。そのためにも、院内で看護の連携をもっと強化して、嬉しい場面を掘り起こしていきましょう。

福田)本当にそうですね。私も前向きに頑張ります(笑)。