地域救命救急センター 師長x主任対談

師長 池下愛子・主任 喜井なおみ
地域救命救急センター師長・池下愛子さんと主任・喜井なおみさんに管理の仕事、人材育成、職場づくり、これからの抱負などを聞いてみました。


看護をする上で大事にしたいことを
共通認識できたことが心強い(池下)

―喜井さんは、この4月に主任に昇格されたとのことですが、何か変化はありましたか。
(喜井)私たちの職場には主任がいませんでした。その状態で私が副主任だったので、主任になっても特に変化は感じませんでした。師長はメンバーに対して優しい感じで接するので、私の役割は厳しく指導することだと思っています(笑)。
(池下)私は優しい印象で得をしています(笑)。喜井さんは厳しいのではなく、メンバーに対してやるべきことをしっかりと言ってくれているのです。そして、メンバーが相談しやすい雰囲気を作ることは忘れていません。少し厳しめにメンバーに接した時は必ず私に報告してくれているので、状況がよくわかり、適切なフォローがしやすいですね。一人ひとりの個性に合わせた指導をしてくれるので、メンバーにとっては納得性の高い指導になっていると思います。
(喜井)経験年数、部署での経験などが一人ひとり違うので指導の方法は配慮しているつもりです。
(池下)喜井さんは昨年、認定看護管理者教育課程のファーストレベルにチャレンジしたのですが、その際に作成するレポートを見て、看護師として、看護管理者として大事にしていることや考え方がわかり、共通認識できたのことは職場づくりやメンバー育成を一緒に取り組む上で心強く感じました。
(喜井)レポートだけでなく、授業で学んだことについて師長に質問したり、感想を見て頂いたりしていたので、部署で大事にしていこうとしていることについて共通認識できたのは私にとってもよかったですね。
―部署で大事にしていこうとしていることとはどんなことですか。
(池下)トラブルによって、患者さんに害が及ぶことは絶対に許さないという強い意志です。
(喜井)私は専門職としてやっていこうと思っていたので、管理職には全く興味がなかったのですが、池下師長と管理についてコミュニケーションを図っているうちに、この師長の下で主任をするのは良いかもしれないと思い、いつの間にか師長の背中を見ながら、一緒にこの職場づくりをしていきたいと思うようになりました。
(池下)毎日、朝晩だいたい10分程度は二人で話しています。特にテーマを決めることなく、いつの間にか習慣になりました。雑談もたくさんありますが、一番多いのは、喜井さんが腑に落ちていないことについて「師長ならどうしますか」というような会話です。この質問のおかけで、私もより深く考える機会になり、適切な指示が出すことができるようになりました。
(喜井)師長の指示を全体に伝えなければならないことが多いので、やはり、「なぜ」ということをしっかり理解しておかないといけないからそんな風に聞くのだと思います。

気負うことなく、メンバー全員で
どんな壁も乗り越えていける(喜井)

―池下師長は、サードレベルの教育課程にチャレンジし、2ヶ月ほど職場を喜井さんにお任せされたとのことですが、喜井さん、その時はどんな気持ちでしたか。
(喜井)あと何日で帰ってきてもらえるのかなあと指折り数えていました(笑)。やはり、不安はたくさんありましたね。
(池下)報告はしてくれていましたから安心していましたよ。私が研修に専念できるように、できるだけ連絡はしないように配慮してくれて、有難かったですね。
―連絡はあまりしないということですが、毎日朝晩コミュニケーションを取っていた師長がいないとどうすればいいか腑に落ちないことはどうやって判断し、指示を出していたのですか。
(喜井)副部長、他部署の師長をはじめいろいろな先輩に相談し、助言をたくさん頂きました。その時は、私が戸惑っているとメンバーが不安になりますから、戸惑いを見せないようにと意識していました。
(池下)私が職場に帰ってきた時は、リーダーが成長し、職場のチームワーク力が増したと思いました。
―喜井さん、何かされたのですか。
(喜井)いや、一人ではすべてできないので、師長と私の関係性と同じように、私とリーダー格の人の関係性を作ろうとしました。私の場合は、リーダー格の人たちに「こんな時、どうしたらいいと思う?」という感じでできるだけ相談するようにしました。そうすると自発的にいろいろな知恵を出してくれて、それでうまく回っていったと思います。もともと、経験豊富で優秀な人たちなので、そういう機会が結果的に良かったのかなと思います。
(池下)喜井さんももちろん頑張ってくれていたのですが、リーダーを初めとしてメンバー全体でチームワークを発揮してくれたと思います。
(喜井)部署を守ろうという雰囲気になっていたと思います。師長が日々どんな状況で仕事をしているのかが理解できたこと、今の自分の状況で経験できないことを経験できたこと、その結果、気負うことなくメンバーと一緒にどんな壁も乗り超えていくことが大事だということ…そんなことを学べる貴重な経験ができました。

関わる時間が短いからこそ、患者第一、
心のケアを大切にしていきたい(喜井)

メンバー同士教え合い、高めあう、
風通しの良い職場にしたい(池下)

―さて、これからどんな職場にしていきたいですか。
(喜井)救命というと一般的には華々しい部署というイメージがあるようですね。ドラマなどの影響もあるのでしょうか。でも、何よりも患者第一、そして家族を中心にして仕事に取り組むということを大事にしていきたいと思います。特に、私たち看護師が意識しないといけないのは治療に加えて心のケアだと思っています。しかも、私たちの部署では患者さんやその家族と関わる時間が短いです。しかし、どうなるんだろうという見通しのつかない不安は最も大きい時期かもしれません。だから、心のケアを意識したいと思います。そして、メンバーと一緒にそういうことを大切にしていく職場を作っていきたいと思います。
(池下)私も、喜井さんと同じ考えです。例えば、この薬剤はどんな目的で使うのだろう、例えば、この状況だとどんなケアが適切なのだろうという風に、この人には、この理由で、こういう関わりをするのが適切であるいうことを常に意識して、自分で考えて取り組むことを大事にする看護師の集団にしたいと思います。そのためには、看護師同士がお互い気軽に相談し、教え合い、高めあう、そんな風通しの良い職場にしたいと思います。