最近経験した生活を支えている方々の話

荻田多恵子
最近救急室での夜勤中にこんなことがありました。
夕方勤務開始時に、点滴室で高齢の女性がストレッチャーで横になって休まれていました。食事がとれず元気が無いので心配でとご家族が救急車を要請され来院されたようです。定年退職したという息子さんが心配そうに付き添っておられ、「さっき先生に検査結果などの話は聞きました。これといって異常はないそうです。でも、食事も食べないしどうしたらいいのでしょう?妻は自分の両親の様子を見に実家に行っていて私一人でめんどうをみています。」と私に声をかけてこられました。話を聞き相談にのったりした後、息子さんはお母さんを連れて帰られました。朝方、自宅で倒れていたと高齢の男性が救急搬送されてきました。到着時には意識は戻っており会話も可能なくらいになっていました。病状説明のために、待合のご家族を呼びに行ったところ、なんか見覚えがある方だと思い声をかけると「夕方母親を連れてきていました。今度は父親です。」と言われ思い出しました。結局大きな異常はなく自宅に戻られることになりましたが「入院は無理なのでしょうね?」と息子さんから声をかけられました。
実際、救急室での対応としては今すぐ治療が必要な状態ではなく入院せず自宅療養の対応で良いと思います。しかし、私は看護師としてこの患者さんとご家族はこれからどのように過ごしていくのか心配でもあり疑問に感じています。

褥瘡ラウンドでの出来事です。食事がとれない事から栄養状態が悪く褥瘡のある患者さんのところにラウンドに行っていたときのことです。どなたかが面会に来られたので「ご家族の方ですか?」と尋ねると「この方の担当のケアマネです。」とのことで処置中ですが面会してもらいました。褥瘡の様子を見たり、患者さんとしばらく話もした後「しっかりご飯を食べて元気出さないかんよ。息子さんにも様子を連絡しとくからな。」とおっしゃって帰って行かれました。入院中にわざわざ様子を見に来てくださるケアマネージャーさん、そしてこの方が遠方におられるご家族との橋渡しをしてくださっているのだなと思うととても有難い気持ちになりました。

入院することですべて解決できるわけではありません。高齢になっても住み慣れた場所で暮らし続けることができるようにするためには、状態に合わせた支援を受けることが必要であり、そのことについての知識を持っているかが大きなポイントです。そして、状態に合わせたということは専門職である看護職の役割が大きいと考えます。以前に「生活」を見ながら「医療」の視点で支援をマネジメントできる看護職という言葉を紹介しましたが、こういうことだと思います。
相手を理解し、その人に合った対応をすること、対応しようとすることは看護の基本だと思います。相手とは、患者さんご家族だけでなく、一緒に働く同僚、家族ももちろん対象となります。